Peter Brown - Stargazer (1979 USA) [Spotify完全対応]

Peter Brownで検索すると、同姓同名の別人が数多出てくる。そういう意味では、覚えられやすいが、同時に忘れられやすい名前だ。今回取り上げるのは、K.C.& the Sunshine Bandのヒット連発で、メジャーなインディーに急成長したTK Recordsから、1977年にDriveというレーベル名でデビューしたPeter Brownのセカンド・アルバム=“Stargazer”だ。

折からのディスコ・ブームに乗って、ファースト・アルバムから2曲のTop40ヒットを生んで、幸先の良いスタートを切った。しかし、両方ともディスコ路線だったため、Peter Brownの多彩な音楽性が広く知られることなく、音楽シーンから消えていった。ミュージシャンにとっては致命的な難聴が悪化したのが、引退の直接原因だった。

1970年代後半のアメリカの音楽シーンは、大物ロック歌手やバンドまでがディスコ・ヒットを飛ばす時代だったから、その手の一発屋も次々に登場し消えていった。ある意味で2曲もヒットを放ったのは見事だったが、そのデビュー・アルバム “A Fantasy Love Affair”(1978)は、タイトルから連想されるようにメロウな一面も持っていた。レーベルもそうした楽曲をシングル・カットしたが、珠玉のバラード "For Your Love" (wrttien by Robert Rans) ですらチャートインしなかった。

ディスコ・サウンドには食傷気味だったSunHeroは、底抜けに明るく軽快で、黒人音楽特有のネチっこさなど微塵もない、K.C.& the Sunshine Bandにはハマったが、他にTK Recordsのアーティストで注目したのは、「風のシルエット」でデビューしたBobby Caldwellだけだった。不運だったのは、後者がデビューした頃には、レコード会社の経営は傾き始めていて、1979年の倒産で路頭に迷う破目になってしまったことだ。

CaldwellがSyndromeというマイナー・レーベルで細々とアルバムを発表し続けていた頃、BrownはRCA(Warnerという節もあるが、Discogsによると発売元はRCAとなっている)と契約し、アルバムを2枚リリースした。シングルはディスコ・チャートにはランクインするも、かつてのようなヒットには至らなかった。一方で、Madonnaのヒット曲 "Material Girl" (Single Cut in Jan. 1985)の作者(written by Brown & Rans)として再び注目を集めたが、前述の通り持病の悪化で一旦音楽業界から去った。

本作を紹介するにあたって調べたところ、2018年に34年振りのアルバムを発表していた。iMacを駆使して、作曲・編曲・演奏・録音・制作の全てを独りでこなした作品だそうだ。どうやら、今回のPeter Brownの一連の再発売は、新作と何らかの関係があるのかもしれない。日本でも輸入盤に日本語解説と背ラベルを付けた国内仕様が発売されたが、恐らくこれが日本初CD化なのではないかと思う。

SunHeroは再発CDにも疎くなってしまっていて、昨年の国内仕様盤の発売を知ったのは、今夏のことだった。完全な輸入盤でも、国内仕様盤より少し安い程度だったので、楽天ブックスで楽天スーパーポイントを全部使って入手した。

本作は、何と言ってもタイトル・トラックが素晴らしい。初めて聞いたのは、友人KTの下宿だった。インターネットが登場する以前、洋楽番組なんてほとんどなかった頃、恐らくTower Recordsが日本に進出する直前だったと思う。

いきなりこの曲を聞かされ、後からLPジャケットを見せられ、ディスコ・ミュージシャン程度の認識しかなかっただけに、たちまちアーティストに対する見方を改めた。だから、忘れた頃にCD化され、国内仕様まで出回っていると知った時の驚き・喜びは一入だった。

リリースから40年目の今年、このアルバムに再会できたのは、奇跡と呼べる収穫だった。何しろ、今回初めてアルバムを全曲きちんと聞いたのだから。そして思ったのは、Peter Brownというアーティストは、ディスコ調の楽曲よりも、ポップな曲やスロー・バラードの方が、伸びやかな歌唱力が遺憾なく発揮されて、魅力的だと言うことだ。

個人的に驚いたのは、声質はもとより作風までKasim Sultonに似ていて、"Stargazer"とか全ての演奏を独りでこなしたアカペラ風の”Love In Our Hearts”など、Kasimの新曲だよと紹介されたら信じてしまいそうな程だ。人種のルツボ=アメリカにおいて、有色人種ではあっても黒人ではないPeter Brownのボーカルが黒人ぽくないのは当たり前で、ディスコ調の楽曲では無理に黒人ぽく聞かせようとリキんでいる姿が想像された。

思っていた以上にポップな面を感じた曲は他にもあって、2曲目 "It's Alright" のストリングスの使い方なんてモロにELOだし、4曲目 "Got To Get The Show On The Road" に至っては疑似ライブの体裁でシンプルなロックンロールを展開している。疑似ライブという手法は、一足先にElton Johnが "Bennie & The Jets" で実践したスタイルだ。

一方で、6曲目の “West Of The North Star” は、Pat Hurleyのしゃべりやシンセサイザーの音が、P-Funkを連想させずにはいられない。

また、アルバムを締め括る "Penguin" は唐突に終わってしまう奇妙な曲だが、恐らく本物ではないペンギンの足音や鳴き声といった効果音が、同じ年に発表されたTodd Rundgrenの「ミンクホロウの世捨て人」に収録された "Onomatopoeia" を連想させた。しかも、楽曲全体の印象は、正にマイアミ・サウンドと呼べるもので、思わずほくそ笑んでしまった。

それにしても、前作のヒットにも拘わらず、基本的な演奏はPeter Brownのキーボードとドラム、Tom Dzialloのギターとベースだけで、曲によってホーン・セクションを起用したり、別録りのストリングスをオーバーダビングしている程度だ。2曲目には故Dan Hartmanがコーラスで客演しているが、当時としてはセールスポイントにはならなかったようだ。

こうなると、SunHeroの妄想は暴走する。そのマルチプレイヤー振りは、Tony (bass)とHunt (drums)のSales兄弟を迎えて制作された”RUNT”時代のTodd Rundgrenを彷彿とさせる。更に、玩具の銃を持った両手を肩の高さに挙げて背中を向けたジャケット写真は、Todd Rundgrenの “Something/Anything?” の見開き中ジャケットとオーバーラップする。

極め付けは、やはりKasim Sultonによく似た声質だ。40年余りにも渡って過小評価してきたことを詫びたい。



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