リメンバー・ミー [Coco] (2017 USA)

rememberme_poster.jpg今年のアカデミー賞とゴールデングローブ賞で、最優秀長編アニメーション賞に輝いたディズニー・ピクサー作品「リメンバー・ミー」を見に行った。ピクサー作品にしては珍しく、短編アニメが同時上映だった。ナントそれは「アナと雪の女王」の2作目のスピンオフだった。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品とピクサー作品がセットで上映されるのは、異例中の異例ではないか?

しかも、最近のディズニーは、日本語吹替版向けに、邦題のみならずオープニング・タイトルまで日本仕様だ。日本向けに特別な手間を掛けたからか、近隣の映画館はどこも吹替版の上映ばかりだった。公開一週目には、夜の上映だけ字幕版という劇場もあったようだが、子供たちが春休みに入った二週目以降は、全て吹替版になってしまったようだ。

そもそも「アナと雪の女王」の原題は "Frozen" だったが、アンデルセンの童話「雪の女王」にインスパイアされた作品だったことから、上手い邦題を付けたものだと感心した。「リメンバー・ミー」の場合、原題は ”Coco” だ。主人公のミゲル少年の曾祖母の名前だ。

ところが、邦題には主題歌の曲名が用いられた。同アカデミー賞で最優秀主題歌賞を受賞しただけあって、「Let It Go~ありのままで」に引けを取らない名曲だ。吹替版しか見ていなかったら、原題も「リメンバー・ミー」だと思い込んでしまっても、何の不思議もないだろう。

そういえば、「アナ雪」では、YouTubeでご覧になった方も多いと思いますが、「Let It Go~ありのままで」の各国バージョンを巧みに繋ぎ合わせた動画がありましたね。すなわち、上映国ごとに吹替版声優をキャスティングし、台詞だけでなく歌詞までその国の言語で用意していた。今回も同様で、改めてディズニーの世界戦略の周到さ・したたかさを思い知らされた。

さて、肝心のアニメは、ピクサーらしからぬ毒気の少なさに驚いた。同時上映の「アナと雪の女王/家族の思い出」とは、視点こそ違えど、家族の絆を描いているという共通点があった。文明の発展が核家族化を進行させ、身近な人よりもSNSの向こうにいる見ず知らずの人に救いを求めるような現代に、改めて家族の絆を訴えかける作品を制作した意義は大きいと思う。

それから、メキシコには「死者の日」(Día de Muertos=Day of the Dead)という祭日があるのを初めて知った。まるで日本の「お盆」のような風習だ。盆踊り会場を思わせる祭りの広場には、何気に日本語で「死者の日」と書かれた看板が登場する。吹替版、ホント徹底してます。

決して裕福とは言えないメキシコの田舎町が舞台だが、再開発の名の下に更なる近代化が進む一方で、人情味が薄れていく日本の街並みとは対照的だ。陽気で明るく、気さくだ。そして、町外れの墓地に祖先の墓があるからこそ、墓地から家までマリゴールドの花びらを撒いて、先祖の霊を自宅まで案内する。お盆の迎え火と発想の根っこは一緒だと思った。

昭和の風情が思い起こされるような「生者の国」とは対照的に、「死者の国」はSF大作に登場しそうな巨大宇宙ステーション(あるいはスペース・コロニー)のようだ。垂直・水平、いずれの方向にも無限に広がっていている。いわゆる「生者の国」から絶え間なく死んだ人がやってくるのだから、それくらいのキャパシティーは必要だろう。

だが、「死者の国」にも永遠に居続けられる訳ではない。子孫が絶えてしまったり、「生者の国」に自分のことを覚えていてくれる人がいなくなると、「死者の国」からも消えてしまう。それこそ本当の死を迎えることになるようだ。

そして、年に一度、「死者の日」だけ、子孫のもとへ帰ることができる。ただし、子孫が家の祭壇に先祖の写真を飾っていないと、「死者の国」を出ることは許されない。まるで空港の入出国ゲートのようだ。しかも、顔認証システムが導入されていて、祭壇に自分の写真が飾られていないと通関できない。

そんな「死者の国」へひょんなことから迷い込んだミゲル少年は、代々続く靴職人の家に生まれ、伝説の歌手=エルネスト・デラクルスに憧れていた。だが、リヴェラ家には曾祖母が幼かった頃から「音楽禁止令」が敷かれていた。ミゲルは家業を継ぐ運命にあることを受け入れながらも、自らの中にある音楽的才能を抑えることができずにいた。

厄介なことに、夜明けまでに「死者の国」を出ないと、二度と元の世界へ帰れない。一方、ミゲルが死者ではないことに気付いた骸骨のヘクターは、それを利用して「生者の国」への密航を企む。一見ずる賢くて孤独なヘクターには、強く秘めた想いがあった。

二人は結果的に協力して、デラクルスの悪事を暴き、ヘクターは名誉を回復するが、「生者の国」で唯一人ヘクターを知る人が、その記憶を失いかけていた。辛うじて元の世界へ戻ることができたミゲルは、「死者の国」からも消えかけているヘクターを救おうと、家族の制止を振り切って、曾祖母Cocoの傍らで「リメンバー・ミー」を歌い出した。

ミゲルの勘違いに始まり、ヘクターとの運命的な出会いを経て、リヴェラ家の過去の真実が明らかになった時、正当派のディズニー作品と同じ感動を覚えた。ピクサー作品で思わず目頭が熱くなったなんて、今回が初めてだ。

結局「アナ雪」のスピンオフは、本作の前菜に過ぎなかった。実際、ホントの続編 "Frozen 2"(邦題未定)は、2019年11月の全米公開が決まっていて、現在制作中だそうですね。今回の「家族の思い出」は、原題が "Olaf's Frozen Adventure" というわけで、実はオラフが主役でした。ピエール瀧さん、本当にお疲れ様でした。

リメンバー・ミー&アナ雪-家族の思い出

この記事へのコメント

  • toe

    こんにちは。
    先日、「リメンバー・ミー」にコメントをいただきました toe です。

    私も、この映画は日本と共通している部分が多いところに驚かされながら観ました。

    私は字幕版で観ましたが、吹き替え版で観ると新たな発見がありそうですね!

    私も吹き替え版で観たくなりました。



    ブログにお越しいただきありがとうございました。

    よろしければ、またいらしてください。
    2018年05月06日 11:15
  • Dogwood

    こんばんわ、1年前に当ブログにコメントを頂いたDogwoodです。
    突然すみません、ユートピアが今年再結成して全米ツアーを回るというニュースを聞いて
    興奮のあまりブログを書きました。日本に来たらLive行きませんか?
    2018年04月23日 22:32
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