Herb Alpert & Lani Hall @Blue Note TOKYO, September 7, 2015

実に48年振りの来日公演だそうだ。当然、当時はHerb Alpert & The Tijuana Brass(ティファナ・ブラス)だった。Herbのトランペットをメインに据えた管楽器バンドで、今ならポップ・インストゥルメンタル等と呼ばれるようなジャンルの音楽だ。恐らくインスト・バンドでは、世界的に最も成功したバンドだろう。スパニッシュ・テイストの軽快なサウンドは、メキシコのマリアッチと呼ばれる音楽をアメリカナイズしたもので、「アメリアッチ・サウンド」と評された。

バンド解散後、しばらくはレコード会社の経営を優先していたようだ。“RISE”が全米No.1に輝いた翌年=1980年にプロモーションで来日したが、この時はライブは行なわれなかった。丁度A&M Recordsの日本での販売権が、キング・レコードからアルファ・レコードへ移った時期で、プロモーションよりもビジネス上の来日だったものと思われる。YMOがアメリカ進出できたのも、A&Mの協力を得て、アルファ・レコードがAlfa Americaを設立したからで、謂わばHerbのおかげだ。

日本では、マツダがいち早く“RISE”に目を付け、同社イチ押しのスポーツカー=サバンナRX-7のCMに起用した。続けて、1980年から1986年まで年一曲のペースで、キリン・シーグラム(現:キリンディスティラリー)の国産ウィスキー「ロバート・ブラウン」のCMに、Herb Alpertの曲が起用された。“Route 101”が使われたCMには、ナント本人が出演したこともあって、来日公演への期待は高まったが、結局実現しなかった。

実は、1980年代に入ると、自ら経営していたA&M Recordsは、ヒット曲に恵まれず、早い話が経営難に陥っていた。1970年代を支えていたCarpentersのKarenの突然の死、The Policeの解散など、マイナス要因ばかりの中、Janet Jacksonのブレイクが頼みの綱だった。“Rhythm Nation 1814”がもう1年早く発売されていたら、Polygramに身売りしなくて済んだだろうと言われたほどだ。

A&Mの経営から完全に身を退いてからも、当初は所属アーティストの楽曲管理が目的で設立した音楽出版社=Almo Musicを、原盤制作会社(レーベル)として存続させ、コンスタントにアルバムを発表していた。21世紀に入ると、Tijuana Brassやソロ名義の原盤をユニバーサルから買い取り、新レーベル=Shout! FactoryからCD化再発した。日本ではキング・レコードから発売された。

60年代からのファンというか、Tijuana Brassファンにしてみれば、昔と同じレコード会社からの再発は、とても感慨深いことだったと思う。SunHero的には、A&MやMotownなど、アメリカのメジャーなインディー・レーベルを次々に買収したPolygramが、カナダの酒造メーカー=シーグラムに買収された時の方が衝撃的だった。シーグラムは前年に松下電器産業(現:パナソニック)からMCAを買収したばかりだった。それが今や世界最大のレコード会社=Universal Music誕生の経緯だ。

そんなグローバルな視点の話題よりも、実は日本人にとってHerb Alpertは、もっと身近な存在だ。1967年にスタートしたラジオ界の長寿番組「オールナイトニッポン」で、長年テーマ曲として使われているのが、Herb Alpert & The Tijuana Brassの“Bittersweet Samba”だからだ。今では誰の何という曲か知らない若年層リスナーばかりかもしれないが、受験勉強と称してイヤホンでこっそり聴いていた今の中年でも、結構知らなかったりするらしい。ヒット・チャート・ファンだったSunHeroも、実は“RISE”がヒットするまで、全然知らなかった。

正に音楽業界の生きている伝説=Herb Alpertが、奥方のLani Hallと来日するという情報を得たのは、今年の3月だった。すぐさまブルーノート東京に電話予約したが、体調不良を理由に、4月の来日は一旦白紙に戻った。

新たな日程が決ったのは、6月初旬だったようだ。前回予約した客にはブルーノート東京から連絡があり、公式発表に先駆けた超優先的な予約をさせてくれた。当日もチェックインの際に、前回は大変失礼致しましたと一言付け加える気遣いがあった。

4日連続の出演だったが、1日1ステージのため、ミュージック・チャージだけで2万円超えは覚悟していたが、実際には一番高い相席テーブルでも、1人=15,880円だった。直前の9/2~3に出演したDionne Warwickも、やはり1日1ステージだったが、標準のミュージック・チャージがナント!24,500円だった。業界の重鎮と言えども、ミュージシャンとしての格はその程度ということか?否、マジで2万円以上もしたら、涙をグッと堪えて、断念していたかもしれない。

SunHeroが観に行った最終日(9/7)は、月曜日だった。全席指定と言いながらも、整理番号順に案内されて、予約したエリアの空いている席を選ばせてくれた。迷わずステージに隣接した席にしたら、正にHerbの目の前だった。

既にブルーノートの公式サイトで、宣伝を兼ねた初日のセットリストが公開されていたが、Herbのモニター・スピーカー前の床に貼られたセットリストは、手書きであちこち修正されていた。最終日の特典(?)で、終演後入れ替わり立ち替わり写メを取りに来ていた。中には物凄く要領の良い人がいて、ローディーに声を掛けて、Lani Hallの給水スタンドのセットリストをもらっていた。あの機転と瞬発力、是非ともSunHeroも身に付けたいものだ。


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サポート・ミュージシャンは、近年のレコーディングやライブで常連の方々だそうで、Herbが茶目っ気を出してアドリブを入れても、キッチリ受け止めていた。アーティストが持ち込んだというCDやグッズは、前日までに売り切れてしまったそうで、サイン会も無ければ、ある程度客が帰った後の客席へ戻ってくることも無く、一言も話せなかったのは・・・・仕方ないっかぁ~!

そもそもサインをもらうなら、紙ジャケット仕様で再発された国内盤“RISE”を持参すべきだった。一体どこに仕舞い込んでしまったのか?Herbのアルバムが見つからないなら、せめてBill Cantosのアルバムだけでも持って行きたかったが、これまたどこに仕舞ったのか分からず仕舞い。探す時間は十分あったのに、直前まで何もしなかったのは、一生の不覚だ。

≪ Performers ≫
Herb Alpert: Trumpet, Vocals
Lani Hall: Vocals, Percussion
Bill Cantos: Piano
Hussain Jiffry: Bass
Michael Shapiro: Drums

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