
折しも、「I.S.」なる自称国家が武力を背景に台頭し、その狼煙は北アフリカへ飛び火し、欧米vs.ロシアの政治的対立も影が霞んでしまう今日、何処の国にも属さないスパイ組織が暗躍するという設定は、物騒な現実感がある。副題の「ローグ・ネイション」は、『悪党国家』あるいは『ゴロツキ国家』と言う意味だ。世界情勢を的確に捉えながらも、某アルファベット二文字を連想させない設定は見事だ。
冒頭の会議シーンで、本作が前作の続編だと分かる。我らがヒーロー=イーサン・ハント(Tom Cruise)が所属しているIMFは、もはやアメリカの政府機関としては存在せず、元メンバーはCIAの管理下に置かれる。こんな状況下では、「スパイ大作戦」から脈々と受け継がれてきた指令伝達方法も、ゴロツキ組織に逆手に取られる始末だ。
そして、まるで「ルパン三世」の峰不二子のように、謎の美女(Rebecca Ferguson)がイーサンと付かず離れず、結果的に行動を共にする。流石のイーサンも、前作では足手まといになると煙たがっていたベンジー(Simon Pegg)に、危険な任務の片棒を担いでもらわざるを得なくなる。もっぱら公的機関との交渉役である分析官(Jeremy Renner)も、見かねて駆け付ける。そういう意味では、チームワークを重んじていたTVシリーズに、少し回帰した感じだ。
従来なら、得意の変装と驚異的な身体能力で、イーサンが厳重なセキュリティを掻い潜るところ、その役目をベンジーが担うことになる。スマートな身のこなしのイーサンとは対照的に、オドオドしながら次々にセキュリティをかわして行く様は、まるでC-3POだ。そのうち、ベンジーを主人公にしたスピンオフが制作されるかも?
「スター・ウォーズ」やモロに同類のスパイ映画「007」と重ならないよう、公開を半年も繰り上げることになった腹いせのパロディーだったりして?というのも、当初のエンディングでは面白くないということで、脚本を手直ししたため、順調に撮影していれば、今年の正月映画として公開できたかもしれないからだ。
時代に上手く迎合しながら進化して行く、Tom Cruise版「スパイ大作戦」。SunHeroは、早くも次作が見たくて仕方ない。だが、本作上映前のトレーラー群の中に、「007」よりもインパクトのあるスパイ映画を見つけてしまった。危うし!ジェームズ・ボンド?
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