だが、そんなことは音楽制作には全く悪影響など無くて、次々に一本筋の通った秀作を発表してきた。それもこれも、伊藤ゴローが連作でプロデュースしてきたからに他ならない。さらには、原田知世自身が築いてきた人脈から、折々に楽曲提供を受けてきたから、凡作が出来る訳が無い。モチロン、自分でも作詞するし、時には作曲までこなしてしまう。しかも、最近は悪女を演じるなど、女優業も幅を広げている。
人によっては、昨今のカバー・ブームに出遅れ便乗などと思うかもしれないが、こんなブームになる以前からカバー・アルバムを出している。SunHeroが真っ先に思い浮かべたのは、プロデュースとアレンジに羽毛田丈史とゴンチチを迎えた“Summer Breeze”
さて、今回のカバー・アルバムには「恋愛小説」というテーマがある。1曲1曲が短編小説という訳だ。この発想は、朗読+歌唱という構成の「オンドク」で各地を回っていたことから、思い付いたように思われる。語り掛けるように歌う原田知世の歌唱が味わい深く、しみじみと心に響いてくる大人のアルバムだ。
あくまでも、SunHeroの第一印象に過ぎないが、どうしても14年前のカバー・アルバムと比較してしまって、物足りなく感じた。初めて伊藤ゴローをプロデューサーに迎えて制作された2007年の“Music & Me”
本作の何処がしっくり来ないのかと言えば、序盤の掴みと中後半にずらりと並んだスタンダード・ナンバー群が分離してしまっている印象を受けたからだ。繋ぎの役割を担うべく収録された4曲目"Baby I'm A Fool"は、2009年にダウンロード販売されたジャズ歌手=Melody Gardotの自作曲だ。
こういう無名な曲を見つけてくる感度の鋭さには感心したが、同じタイプでもう少し有名な曲にすれば、印象も随分違ったと思う。単にSunHeroのアンテナに引っ掛かっていたか否かの違いに過ぎないが、例えばRumerの"Slow"だったら、大絶賛していたかもしれない。
それから、Nora Jonesを一躍スターダムに押し上げた"Don't Know Why"も、作者のJesse Harrisとのデュエットだ。畠山美由紀が彼のプロデュースでアルバムを制作した際にも、この曲が取り上げられていたが、あの曲だけがやや浮いた感じがした。
Jesse Harrisにとっては、自身も注目されるきっかけになった曲だけに、もしかするとカバーしたいというオファーに対して、何かしらの条件を付けてくるんじゃないだろうか?例えば、ブラスを配した斬新なアレンジにOKする代わりに、ボーカルで参加させろとか?
オープニングのビートルズ・ナンバーも、テーマに沿った選曲だとは思うが、テンポを遅くするなら、思い切ったスロー・ダウンをすべきだったように思う。そうすれば、後半のスタンダード群との整合性も取れて、14年前のカバーよりもグッと円熟味を増した雰囲気のアルバムに仕上がっていたんじゃないかと思う。


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