
忙しい!忙しい!と言いながら、忙しさを逆手にとって映画を見ました。ちょっと早く仕事が片付いた日に、「おさきにNet」でピンポイント予約して、MOVIXのレイトショー上映(ナント前売券より安い1,200円。しかもネット予約可!)で「スーパーエイト」を。スピルバーグ&JJエイブラムスのコンビで贈る「本年度最高の感動超大作」というフレコミに期待して、何とか仕事をやりくりして見に行ったのに、少々肩透かしを食らった感じでした。
初期のスピルバーグ作品をはじめとした様々な映画へのオマージュが理解できないと、何もかもが中途半端な作り込みという印象を受けることでしょう。そもそもストーリーが「E.T.」+前半は「スタンド・バイ・ミー」、後半は「グーニーズ」という欲張りな展開。ダメ押しで、異星人が飛び立つエンディングは「未知との遭遇」張りの煌びやかさ。だからと言って、子供でも安心して見れるのかと思えば、実は「E.T.」とは真逆の巨大で凶暴な地球外生物が町をパニックに陥れるモンスター・ホラー映画でもありました。(笑)これだけでも十分に詰め込み過ぎな印象だが、町の基幹産業である鉄工所の事故で妻を失った保安官代理の夫とその息子、元々その女性のシフトに入っていたのに仕事を休んで死なずに済んだ甲斐性なしの男とその娘という、二組の親子の因縁まで、ヒューマン・ドラマよろしく盛り込んでいる。子供達の間柄をきちんと描くだけで十分だった気もする。これでよくぞ2時間以内に収めたものだと感心したが、観る側もそれなりの集中力がないと、パニック・シーンの連続に下地となっている人間関係を見失ってしまうことでしょう。
例えば、夜中に駅で8ミリ映画の撮影をしていた子供たちが遭遇した列車事故シーン。あれだけの惨事で、子供が誰一人死ぬことも無ければ、大怪我をすることも無く、クルマまでが無事というのは、どう考えても出来すぎな話だ。そうこうする内に物語はドンドン進行してしまうから、イチイチ疑問を抱いていたら付いて行けなくなってしまうことでしょう。そもそも「あんな危険なもの」を厳重な警護もなしに貨物列車で輸送する必要があったのか?それは凡人には知り得ない軍の機密と割り切りましょう!(笑)
SunHeroはあの列車事故のシーンで割り切ってしまったので、ご都合主義な展開をそのまま受け入れることが出来た。そうなると、この映画は結構楽しめた。迫力のCGを使ったバリバリの新作映画なのに、物語の時代設定が1979年ということで、どこか古い映画を思わせるノスタルジックな映像は逆に新鮮だった。しかも、当時のヒット曲を適材適所に配した使い方は、洋楽ファンのSunHeroを思わずニヤリとさせた。
そういうわけで、本当は至る所ヌカリ無しの脚本なんだろう。それに気付くかどうかで、評価は分かれるようだ。でも、結局、アレコレ詰め込みすぎて、物凄く疲れる映画だというのも事実だ。

SunHeroにとって本作の最大の収穫はエル・ファニングだ。一目見てジョディ・フォスターの再来?と思った。ジョエル・コートニーと並んだ姿に、「小さな恋のメロディ」のトレーシー・ハイドとマーク・レスターがオーバーラップしたのは、恐らくSunHero一人くらいのものだろう。プロフィールを調べたら、ダコタ・ファニングの妹だった。姉妹そろって色々な意味で凄い女優だ。
ちなみに、スーパーエイトはコダック社が開発したカートリッジ式の8ミリフィルムのことで、日本では富士フィルムのシングルエイトの方が普及していたので流行らなかったようだ。少年少女達がこれで撮っていた映画の完成品がエンドロールで披露されるが、元ネタはジョージ・A・ロメロ監督の代表作「ゾンビ」だ。1979年といえば、丁度その映画がゾンビブームに火をつけた頃、映画好きの少年達が撮りたがったのも無理は無い。否、そんなことよりも、ゾンビ姿のエル・ファニングの妖艶さにゾクっとした。(笑)
日本語公式サイトは「キャスト&スタッフ」の紹介すらも見当たらない(SunHeroが見つけられないだけ?)ので、海外各地域の公式サイトへのリンクを張っておきます。まあ、普通は制作国のサイトが一番充実しているんでしょうけどね。

この記事へのコメント
SunHero
ずっと躊躇しておりましたが、こちらからもトラックバックを送らせて頂きます。
最近のスピルバーグは自分が制作に回って、色んな監督に自分の見たい映画を取らせているような印象です。つまり、スピルバーグ・フリークが喜ぶような映画ばかりができるということです。裏を返せば、スピルバーグ・ファンでも何でもないクマネズミさんがご覧になっても面白いはずが無いという訳です。それを延々ブログで書き連ねても、意味が無いんじゃないでしょうか?
「ゾンビ映画時代の先触れ」論については、クマネズミさんが「東京公園」を取り上げられた際にじっくり拝見させて頂きます。
クマネズミ
コメントを2つもいただきながら、『この愛のために撃て』についてのレヴューは「随分先になる」とのことですので、まずはこちらのエントリについてコメントさせていただきます。
クマネズミの方は、スピルバーグ作品を見ていないわけではありませんが、総じて余り好きになれないこととか、この映画の「列車事故のシーンで割り切ってしま」えなかったことなどもあって、どうしても「ご都合主義な展開」の方に目がいきがちとなり、最後まで「楽しめ」ませんでした。
ですが、SunHeroさんがおっしゃるように、実際には「至る所ヌカリ無しの脚本」のようで、誠に唐突ながら、例えば、『映画芸術』の最新号の対談で寺脇研氏が、「全部の登場人物やエピソードが無駄じゃないところがすごいよ」などと言っていることもあり、むしろクマネズミの方が随分と甘すぎたようです。
なお、「少年少女達がこれ(スーパーエイト)で撮っていた映画の完成品がエンドロールで披露される」ことに関連しますが、遅ればせながら昨日見た『東京公園』の中に、ゾンビ映画(劇中映画『吸血ゾンビの群れ』)が登場するのには驚きました。『スーパーエイト』の情報を掴んだ上でのこととは全然思えませんから〔公開日も『東京公園』の方が早いですし(日本では)、『スーパーエイト』の情報管理は徹底しているようですし〕、もしかしたら今後世界を覆い尽くすかもしれない“ゾンビ時代”の先触れではないでしょうか〔他方、『X-MEN』とか、高野和明氏の『ジェノサイド』に登場するヌースなどからすると、これからは“ミュータント”時代なのかもしれませんが〕?