Paul Davis - Paul Davis (1980)

pauldavis_pastelmessage.jpg本作の邦題は「パステル・メッセージ」。本作がPaul Davisの日本デビュー盤として陽の目を見た経緯を知らなければ、ジャケットも中身も一体どこが「パステル」なの?と疑問に思うのが普通だろう。甚だミスマッチな邦題が付けられたのは、当時一大ブームを巻き起こした田中康夫の小説「なんとなくクリスタル」のおかげだ。AORファンには次作「クール・ナイト」と共に人気の高い作品だ。

アメリカでは一時代(1970年代後半から1980年頃)の音に過ぎなかったAOR(そもそもアメリカにはAOR=Adult Oriented Rockなんていう音楽の括り方はない)は、むしろ日本で根付いたジャンルだ。最初のブームは1980年頃に当時のCBS/SONYが仕掛けたもの。二度目のブームは1990年代末に音楽解説本「AOR~Light & Mellow」とマイナー・レーベル(CoolSound、Dreamsville、等)が潜在的なAORファンの需要に応えたもの。温故知新のネタが尽きた最近では、CCM系のアーティストをAORとして日本に紹介する傾向にあるようだ。

実は本作にその原点を見出すことができる。シングルヒットした“Do Right”をはじめ、キリスト教文化の思想がストレートに表れた曲が多いからだ。Modern GospelとかChristian Contemporary Music(CCM)なんて言葉は、当時のアメリカにもまだ無かったと思う。だが、ロック・ミュージカル「ゴッドスペル」(1971)の例を挙げるまでも無く、ロックにまで宗教色が滲むのはキリスト教圏のお国柄だ。彼等から見れば、日本人の無節操な宗教感の方が理解し難いようだ。

そういうわけで、本当はジャケット写真の印象そのままの地味な作品集だ。愚直なほど飾らない人柄が滲み出ている分、前後のアルバムよりも私小説的な味わいがある。Paul Davis流ディスコ・サウンドの“Too Slow To Disco”なんていう、チョット場違いな感じの曲も、実は信仰心との葛藤を茶化して歌っているように思えてくる。世俗的な部分も見せてしまうところに人柄が偲ばれて、親近感が湧いた。そのせいか時々心が洗われるような気分になったのは、信仰心の薄いSunHeroにもCCMの効能があるということかもしれない(笑)。

とはいえ、前作"Singer of Songs・Teller of Tales"と不朽の名曲“I Go Crazy”が無かったら、Paul Davisというシンガー・ソングライターのことはスルーしていたかもしれない。実際、“Ride 'Em Cowboy”や“Superstar”といったそれ以前のヒット曲には興味は起きなかった。

今回、ほぼ30年振りで聞いて、当時の想いが一層深まった。否、当時は漠然とした印象だったものが、はっきりとどういうものだったのか認識できた。それは同時に、音楽を通してアーティストの人柄が感じ取れるような年齢になったということだろう。

それにしても、どうして本作だけがDisk Union経由になったのだろうか?Paul DavisがBang Recordsに残した7枚のアルバムのうち、本作と同名のセカンド・アルバム以外がWounded Bird Recordsより一斉にCD復刻されたが、本作以外の直輸入国内盤はクリンク・レコードから出た。定価はクリンク盤の方が高いが、ネット通販の芽瑠璃堂で買うと、売価では逆転してしまう。その上、丁寧な作りの「帯」カバーの中には歌詞・日本語解説が収納されている。Disk Unionには是非見習ってほしい点だ。

特に配慮して欲しかったのは歌詞カード。LP内袋に印刷されていた歌詞が、ジャケット裏面にそのまま縮小されて印刷されているが、老眼のSunHeroには非常に読み辛い。日本語解説書の裏面はマッサラなんだから、拡大して印刷して欲しかった。もし本作もクリンクから出ていたら、きっとボーナス・トラックのインタビューの対訳も掲載してくれたに違いない。Disk Unionのご担当者には、ぜひコメント欄で事情を説明して頂きたいと思う。

ところで、Sony Musicが「洋楽秘宝館」の企画で再発した方の「パステル・メッセージ」は、歌詞・解説などどうなっていたのだろうか?お持ちの方がいらしたら、ぜひコメント欄でお教え頂きたい。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック
©Entertainment Weblodge SunHero
All rights reserved (except where noted)