Todd Rundgren - Arena (September 2008)

還暦を迎えたTodd Rundgrenのミュージシャンとしての衰えには、聞くに堪えない、観るに忍びないものはあるが、それでもなお音楽を作り続ける姿勢には畏敬の念を抱かずにはいられない。昨年4月の唐突な来日公演で半ばヤケッパチな感じながらも、ロック・ミュージシャンとしての意地(真髄)を魅せ付けてくれたが、それがそのままCDになったのが本作と言った感じだ。

前作“Liars”の延長上にある作品と言ってしまえば身も蓋も無いが、PC-madeのスペーシーなサウンドに乗せてソウルフルなボーカルを聞かせていた前作よりも、格段にロック色が濃い。アルバム・タイトルにはArena Rock指向という意味があるらしい。もう還暦なんだから、余り無理するなよと心配になってしまうほど、並々ならぬ意気込みが感じられる。まあ、実際に自分で演奏したのはギターくらいだろうが、ハワイの自宅スタジオであの絶叫ボーカルをどんな風に録音したか、想像してみるとチョット吹き出してしまいそうだ。かつてGrand Funk (Railroad)をプロデュースした男だから、こういうハード・ロック路線のアルバムを作っても不思議は無いが、何も還暦を迎えた今頃になって・・・・という気がしない訳でもない。案外、PC-madeで簡単にこういうサウンドが構築できるようになったからなのかもしれない。

否、Todd Rundgrenには時代の符号を少しばかり先読みする能力があるようだ。先例を挙げれば、70年代半ばに解散したKing Crimsonが80年代初頭に新しい布陣で復活した際、それを予言したかのように“Healing”というアルバムをリリースしたことがある。これはそのアルバムの国内盤LPの解説に書かれていたことの受け売りだ。

その他にも、90年代にインタラクティブ・ミュージックを提唱した際に大胆にラップを取り入れたのは、後のExtremeやLimp Bizkitの登場を予見していたとしたら、どうだろうか?本人がそういうことを自覚していたとは思えないが、かつて奇才と呼ばれた男だから有り得なくもない気がする。

本作の場合、直後にAC/DC、Metalica、Guns N'Rosesの新録アルバムが立て続けにリリースされた。実際、AC/DCやMetalicaを髣髴とさせる楽曲もあって、解釈の仕様によっては老いて後輩のフォロワーに成り下がってしまったと取れなくもない。だが、かつてビートルズのパロディ・アルバムを作ったように、今回はハード・ロックに対する一種のオマージュなんじゃないだろうか?

珠玉の名曲から奇才ならではの迷曲まで、迸るアイディアを音質二の次で音楽にしていた70年代の瑞々しさを期待する方が無茶というもの。ただ、Todd Rndgrenの音楽制作の姿勢は、ある意味で70年代と変わっていない。昔も今も宅録&一人多重録音だからだ。老いて楽器演奏能力が衰えてきた分を、テクノロジーの進歩が補完している形だ。

プロデューサーとして業界の裏方に徹する道だってあるはずなのに、こうしてバリバリの現役アーティスト振りを見せ付けられると、私もまだまだ頑張らなければという思いに駆られる。Todd Rundgrenがこの先もどんな音楽をどんな形であれ提供し続けてくれるだけで、私は素直に嬉しい。

★Best Track=“Courage”
へヴィーな楽曲が続いた後に心地良い疾走感のあるこの曲を持ってきたせいか、流麗なギターのイントロと共に心がすぅ~っと引き込まれてしまった。

この記事へのコメント

  • SunHero[管理人]

    六本木でうどんランチ、その辺のうどん屋とは違うんでしょうね。何しろBGMからして洒落てる!でも、それ、ひょっとしてフリーソウルのコンピ垂れ流しだったりして?
    2009年01月18日 21:44
  • obscuredesire

    新譜ですか?
    先週、夏木マリ関係で有名なうどん屋@六本木でランチしたのですが、
    何故か店内BGMがトッドのR&Bメドレーでした。
    有線じゃないだろうしなぁ。。。
    2009年01月18日 20:29

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