Herb Alpert - Rise (July 2007 Re-issue) [Spotify対応]

最近、コンサート三昧な日々に、すっかりCDレビューが滞ってしまいました。ライブの記憶が鮮明なうちにレポートしようとするため、ブログで取り上げようと思っているCDを聞き込む余裕が無いからです。それでも、CDは買い続けていて、その一部は「音楽生活」や「音楽ニュース」で、皆さんにもお分かり頂けていると思います。

一応、ライブ三昧な日々も、あと2公演で小休止になります。つまり、怒涛の谷村有美ライブ・レポートが控えている訳です。その前に1枚くらいレビューしておこうと思います。こういう時こそLP時代に聞き親しんだ洋楽の再発モノにスポットを当てるべきでしょう。J-POPやアジアものに比べれば、短時間で原稿が出来ちゃうから(笑)。

いやあ、これを店頭で見つけた時には小中学校の恩師に再会した気分でしたよ。丁度Supertrampの再発モノに奔走していた時、紙ジャケCDコーナーで偶然見つけました。見れば昨年の再発。よくぞ今日まで売れ残っていてくれたと大喜び。

実はSupertramp6作品で16,800円。そのCD店のスタンプは500円で1個なので、不足分200円を補填してくれる商品を探していたのです。ラッキーなことに、これは2,200円、締めて19,000円。ダブルスタンプ実施中だったので、無駄なくスタンプ76個ゲット!\(^o^)/

一緒に買ったのがSupertrampっていうのも何かの因縁でしょうか?今回再発になった彼等のアルバムは、A&M Records時代のもの。A&Mの「A」はモチロンHerb Alpertの「A」。そんなことは知ってるよ!って方もいらっしゃるとは思いますが・・・・なぜか、本作はKing Recordsから発売されています。

ちょっと調べてみたら、本作に限らず、1960年代のHerb Alpert & The Tijuana Brass(ティファナ・ブラス)作品が2005年から順次キングより発売になっているんですね。King Recordsは1960年代に「洋楽のキング」と呼ばれ、海外の広範なレーベルの日本発売権を積極的に獲得、A&Mもそのひとつでした。そういう意味で、Herb Alpertの一連の旧作がキングレコードから発売になったのを、感慨深く受け止めている方もいらっしゃることでしょう。

Motownがシングルヒットの大量生産で独立系のメジャー・レーベルに発展した1960年代、A&Mは創始者の一人=Herb Alpertがベストセラー・アルバムを量産してメジャーになりました。どちらも今はユニバーサル・ミュージック傘下ですね。膨大な音源を抱えてCD化が追いつかない状況は容易に推測されます。本作以外CD化の気配がないことを逆手に取ったのか、Herb Alpertは2000年にユニバーサルから自分の旧作のマスターを買い取り、自らデジタル・リマスター/リミックスを監修し、CD化再発を推進したようです。

多くの洋楽ファンはシングルヒット中心に1960年を語ることが多いため、ビートルズやモンキーズよりもアルバムを売っていたにも拘らず、Herb Alpert & The Tijuana Brassを取り上げているブログってホント見かけませんね。そもそもロックじゃなかったし、ジャズと呼ぶには余りにも庶民的な音楽だし、強いてカテゴライズすれば「歌無しポップス」。ロック・ファンからもジャズ・ファンからも軽視されても仕方ないですね。でも、当時はロックがまだまだ若者の音楽で、そういうものに眉をしかめる年配層の絶大な支持を得ていたのです。

1970年代に入って、A&Mがイギリスに子会社(これがPeter Frampton、Supertramp、Policeの商業的成功を生んだ)を作ったり、CTI(フュージョンの先駆けとなったレーベル)やOde Records(Carole Kingしか売れませんでしたが)の配給を担ったり、ソウルやロックにまでビジネスを広げるようになると、そっちが忙しくて自身の音楽活動は緩慢になって行きました。というか、ティファナ・ブラスを率いて隆盛だったアメリアッチ・サウンド自体が60年代のノスタルジー(旨い表現でしょ?要は「時代遅れ」ってことです)になってしまったようです。

ところが、1979年、Herb Alpertはミュージシャンとして業界の最前線に鮮やかなカムバックを果たします。当時の流行だったフュージョンやディスコのテイストを取り入れた本作は、先行シングルの表題曲がHerb Alpertにとって2枚目の全米No.1ヒットとなり、アルバム自体も久々のTop10ヒットを記録しました。以降、1999年までコンスタントにアルバムを発表していきます。

1987年には、Janet Jacksonをスターダムに押し上げたJam & Lewisをプロデューサーに迎えて、“Keep Your Eye On Me”をリリースしました。フュージョン路線のマンネリを打破しようとしたチャレンジでしたが、ジャネットをフィーチャーした収録曲“Diamonds”がヒットしましたが、Kenny Gのようにインストとボーカルの両立という訳には行きませんでした。

A&Mは苦しい経営が続いた80年代中頃にPolygramに買収され、1994年ついにA&Mを離れて、盟友Jerry Mossと新たにAlmo Soundsというレーベルを立ち上げます。レーベル名の由来はお分かりですね。元々はA&Mが発掘したアーティストのオリジナル楽曲を管理する音楽出版社の名前でした。Carpentersのオリジナル・アルバムにAlmo Musicのクレジットが見受けられます。ただし、本作を含む旧作のCD化は、なぜかAlmoではなくShout! Factoryというところから出ています。

さて、本作ですが、やはり表題曲“Rise”の絶妙なバランス感覚のサウンドが最大の聞き物でしょう。低音をもっと利かせたた方がいいとか、もう少しテンポアップした方がいいとか、色々意見はあったようですが、Alpertは自分の感性を信じてオリジナル・ミックスを押し通したそうです。そもそもレコード会社の副会長だったから、面と向かって反対する人など居なかったことでしょう。

当時はアルバムのセールスを上げるためのアテンション・ゲッターくらいにしか思っていなかったCrusadersのカバー“Street Life”も、なかなかいい味を出していることに気付きました。また、クラシックの有名曲「アランフェス協奏曲」の煌びやかなディスコ風味も、ようやくアレンジの妙が分るようになって、違和感は失せました。あくまでも根底にあるのは万人受けしそうなポップス感覚なんですよね。それが音にうるさいジャズ・ファンなどから軽視されてしまう原因でもあるわけです。

というか、ジャズ・トランペッターと呼ぶには、確かに技量不足です。同じようなスタンスのGeorge BensonやKenny Gがジャズ・ミュージシャンと見なされるのは、耳の肥えた音楽ファンをうならせるだけのテクニックがあるからです。Herb Alpertは自分でもそれを十分わきまえていたからこそ、アイディア勝負のインスト・ポップスで一時代を築き、A&Mをメジャー・レーベルに押し上げたのです。

ちなみに、今回の再発では2曲のボーナス・トラックが追加収録されました。それを含めたアルバム全体のバランスを考えたのか、本編の曲順が一部入れ替わっています。アーティストの意向によるものだという断り書きが、日本語解説の後に付記されています。そういうところが、いかにも経営者・プロデューサー的発想で、Herb Alpertらしい拘りだと思いました。だって、普通アーティストというものは、曲順をチョット変更するだけでも嫌がるものじゃありませんか?

●Best Track=“Rise”
何度聞いてもチョット物足りない感じがする=「こそばゆさ」こそが、この曲の魅力=魔力なんでしょうね。



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