新海誠監督の2007年のアニメ作品「秒速5センチメートル」が、まさかの実写劇場版として公開された。原作アニメでは詳細には描かれていない大人になった主人公を、松村北斗と高畑充希が演じている。
先月の映画三昧の日に観ようとしたが、上手くスケジュールが組めなかった。ピタリとハマったのは、「ブラックショーマン」だった。そこで、山下達郎のコンサートの日、ライブのウォーミングアップのつもり(?)で、新宿バルト9で観た。
ところで、皆さんは原作アニメをご覧になったことがありますか?SunHeroもリアルタイムでは見たことはありません。「君の名は。」のブームの後、U-NEXTで観ました。先月テレビ放送もあったようですね。
原作は、音楽に例えれば、ラヴェルの「ボレロ」のように、あまり起伏のない、淡々と進行する物語でした。小学生の時に東京で出会って、境遇が似通っていたことから、互いに惹かれ合っていった少年と少女(遠野貴樹と篠原明里)の成長と心境の変化が、丁寧に描かれていた。
実写版では、それが大人になった二人の回想シーンとして描かれている。描かれる順番が違うので、少々戸惑ったが、大雪の日に少年が少女に会いに行く、アニメでのクライマックスはキチンと描かれていた。
時系列に沿って進行するアニメ版だと、割と早く登場してしまうクライマックスは、劇場版では中盤に登場する。このとき、雪の積もった桜の木の下で、冗談ぽく交わした約束は、大人になった二人も覚えていたが、約束を守ったのは貴樹だけだった。
大人になった二人は、共に東京で暮らしていたが、互いにすれ違ったまま日々を送っていた。ある日、二人は踏切ですれ違った。電車が通過した後、貴樹は振り返ったが、明里の姿は無かった。このシーン、SunHeroはアニメ版の方が好きだ。
実写だと、どうしてもドラマ「Silent」の目黒蓮と川口春奈が、オーバーラップしてくる。だって、場所は違うが、どちらも小田急線からみだから。もちろん「Silent」の踏切シーン、本当は東急世田谷線なんだけどネ。
主演はあくまでも大人になった二人を演じた松村北斗と高畑充希だが、回想シーンで貴樹と明里を演じた上田悠斗と白山乃愛は、アニメの二人を瑞々しい演技で見事に演じて見せてくれた。主演の二人には悪いが、あの若い二人の等身大の演技には、老人も年甲斐も無く胸キュンしてしまった。
実写版の良い所は、アニメ版にあった主人公のキャラクターの不統一感が、大幅に改善されたことだ。改めて調べ直したら、新海監督のインタビューを見つけた。それを読んでハッとした。
当時は短編アニメを制作していた監督は、三編の短編が偶然相互に関連性を持っていることに気付いて、60分超えの短編集として公開した。すなわち、第一話「桜花抄」(小学生時代)、第二話「コスモナウト」(高校生時代)、第三話「秒速5センチメートル」(社会人時代) という三部作だ。
それぞれの制作陣が分業制などで異なっていたのか、各話の色調(映像の色合い)の違いが、時系列の転換を象徴していた。唯一人全話に登場するのは、遠野貴樹だけだ。その彼ですら、成長と共に印象が変わっていた。
実写版では、上田悠斗(小学生)⇒ 青木柚(高校生)⇒ 松村北斗(社会人)とリレーしていた。社会人となった貴樹の回想として、小高生時代を描いたこともあって、各人の演技がスムーズに繋がった印象を受けた。
もう一人の主人公=篠原明里は、第二話には登場しない。中学時代に同級生になった澄田花苗(森七菜)が、もう一人のマドンナだった。地元の男子とは雰囲気の異なる貴樹に惹かれ、高校の放課後に偶然を装って、駐輪場で待ち伏せして、一緒に帰ることを繰り返していた。
しかし、貴樹の中には明里への想いが残っていて、花苗の想いは成就しなかった。何だか久しぶりに、森七菜のいい演技を見た気がした。(NHKの夜のドラマでも好演してますね)
実写版で、貴樹が所属していた弓道部の顧問で、実は花苗の姉という高校教師役を、宮﨑あおいが演じていた。アニメ版の第三話には登場しない輿水美鳥という役だ。しかも、書店員になった明里と、仕事上の繋がりがあるいう設定だ。ならば一体、どういう経緯で教師から転身したのか?
ここで引っ掛かったのは、そもそも姉妹で姓が違うのは何故?ということ。原作アニメでは有耶無耶になっていた事柄が、実写では次々に種明かしされていく。だから、実写で2時間かけて描くんだったら、そこんとこ、ちょっと説明が欲しかったかも。
それはさておいて、てっきり貴樹と明里、両方と関わりを持つ輿水美鳥が、社会人になった二人を引き合わせるのかと思ったら、思わぬ伏兵がいた。貴樹が先輩社員の紹介で転職した科学館の館長=小川龍一(吉岡秀隆)だ。
明里は天文館へ書籍を納品に行き、貴樹が生解説を務めていたプラネタリウムのショーを見学した。見終えた後、たまたま拾ったチラシで、解説者が誰か分かったのに、会おうとはせずに職場へ戻った。
貴樹が館長に積年の思いを吐露した時、館長が口にした言葉は・・・・貴樹が涙を流すと、SunHeroまでもらい泣きしそうになった。秒速5センチメートルじゃなくて、秒殺5センチメンタルだよ。
女は、初恋の想い出を想い出にしてしまう生き物なのか?男は、初恋の想い出をいつまでも引き摺ってしまう生き物なのか?奥山由之監督の原作アニメに則った美しい映像の数々の中で、残酷な結末がアニメよりもハッキリ描かれていた。
特に印象深かった種子島のロケット打ち上げシーンは、実際の打ち上げだったのか?CGだったのか?雪の積もった桜の木のシーンと共に、とても印象的だった。余りにも出来すぎたシーンに、CG疑惑を抱かずにはいられなかった(笑)。
アニメ版の主題歌がちゃんと実写版にも使われていたが、主題歌扱いでは無かった。せめてもの救いは、レンタルビデオ店で明里が何気に手にした作品が、「月とキャベツ」だったこと。何が言いたいのか、もうお判りですよね!SunHeroは、油断して吹き出しそうになった。
最後に、現在NHKの夜ドラには森七菜が出演しているが、その前に放送していた「いつか、無重力の宙で」に主演していた木竜麻生が、社会人になった貴樹の恋人役で出演していた。最近気になる俳優さんなんだよなぁ~。

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この記事へのコメント
SunHero
>こんばんわ。アニメは苦手なワタシですが、実写版は面白そうですね。
アニメを見なくても楽しめると思いますが、時系列のアニメを見てからだと、もっとよくストーリーに移入出来ると思いますよ
>最近泣ける映画見てないので、記事を拝読して興味が湧いてきました。
シネコンでの上映は、1日1回程度なので、事前に調べて予約しちゃっては如何ですか?
ところで、大井町にTOHOシネマズが出来るようですね ウチの方のイオンシネマは、本当に来年オープンするのかな?
Dogwood