遅れてきた渋谷系とか、日本のPower Pop Trioとか、様々な形容がされてきた Cymbals のボーカリストとして、キャリアをスタートさせた土岐麻子。バンド解散と相前後してソロ・デビュー。遅れてきた渋谷系が、シティー・ポップスの旗頭としてシーンを牽引してきて20年。
これまでにも折々の機会を捉えてベスト盤を発表してきたが、今回はポップス・サイドにフォーカスしたコンピレーション・アルバムだ。これまで何度もリメイクしてきた Earth, Wind & Fire のカバー=”September” が選外なのがミソだ。
熱心なファンなら、ライブに行くたびに異なるアレンジで披露されてきたので、もう飽きちゃった!なのかもしれない。それだけに、もしこのベスト盤にどのバージョンを入れるのか?恐らく、どれかひとつに絞ることは無理だったと思われる。
通常盤は、それぞれ Pepper と Mint と名付けられた2枚のCDに、全部で31曲詰め込まれている。初回盤には、書き下ろしたエッセイブックに加えて、昨年5月の Billboard Live TOKYO でのライブの模様を収録したDVD/Blu-rayが付属する。
箱が小さかったせいか、予約ができなくて、ライブ・ストリーミングで鑑賞させてもらった。ライブ映像の方は、恐らく配信と同じ映像が収録されると思われる。
ソロになった頃は、ポップス寄りのジャズをやっていた。プロデューサーは、もちろん日本のジャズ・シーンで活躍した・・・・というよりも、長年山下達郎のレコーディングやコンサートに欠かせない存在だった土岐英史氏だ。
結婚・離婚・父の死を乗り越えて、シティー・ポップスのトップ・ランナーに躍り出たのは、タイミングの問題だけではないと思っている。むしろ、常に新進気鋭のサウンド・クリエーターを起用してきた先見の明によるところが大きいと思う。
特に、サウンドプロデューサーにトオミヨウを迎えた「PINK」、「SAFARI」、「PASSION BLUE」は、出色の出来だった。続く(今のところ)最新作の「Twilight」では、新たに Shin Sakiura を起用した楽曲も含まれている。
これだけだと、ポップスをジャズ・アレンジした初期のカバー楽曲が、スッポリ抜けてしまう。この分だと、20周年記念の第二弾が出るかもしれない。こういう言い方は、綾戸智恵さんに失礼だけど、あの人のジャズ・カバーに比べれば、土岐さんの歌い方は聞きやすいと思う。だから、ちょっと期待してるけど、どうかなぁ~?
ところで、CD 1 が Pepper、CD 2 が Mint なら、DVD/Blu-rayが Time ってことになるのか?だって、ベスト盤のタイトルは “Peppermint Time” なんだもん。そうなると、通常盤はどう解釈すればいいのか?
あっ、分った!PepperとMintの時間(Time)という意味だ!どうしても、谷村有美のコンプリート・ボックス “Crystal Time” を連想してしまう。クリスタル・ヴォイスと評された谷村有美のソニー・ミュージック時代(Times)を総括している。土岐麻子も同様のケースなんじゃないかと思う。
とにかく、入門編としてベストな選曲だと思う。CD部分だけなら、配信で堪能できますよ。ライブ映像は、YouTubeにこっそりUPされてるかも?

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