
まずはアルバム・タイトル。宇宙の軍事利用を否定しない中国の物騒な動向に目を着けたということか?更に、本作から最初に配信された ”Espionage” は、「諜報活動」という意味深なタイトルだ。
ロシアのウクライナ侵攻によって、宇宙からの諜報活動がますます重要になって来たことを先取りしたかのようだ。やっぱり、Todd Rundgrenは未来から来たのかもしれない。だって、仏陀とイエスは、立川で人知れず、地上の生活を満喫してるくらいだからね(笑)。
ところが、その後、小出しされた楽曲は、拍子抜けするようなタイトルだったり、曲調だった。ホントこの人は何を考えて音楽作っているのか?一体どういうコンセプトなのか?凡人には計り知れないものを感じさせる。それがProducer/Songwriter/Multi-Instrumentalist/PerformerであるRundgrenの魅力なのだろう。
1970年代のように珠玉のメロディーを生み出すことはなくなったが、適度に時代に迎合しながらも、我が道を行く姿は頼もしい。時には「何じゃこりゃ~?」というアルバムを発表することもある。例えば、“Re:Production”のように中途半端にアルバム制作の経緯を読みかじっていたために、Princeがアルバム “Parade” で魅せたマイナスの美学を、EDMで試みた意欲作だと気付くのに時間を要した。
そういう意味では、実は未だに前作“White Knight”には合点が行かない。もちろんアメリカの音楽業界は、R&B/Hip-Hop系が幅を利かせるようになって、Rapper同士のコラボが盛んになって、SunHeroには曲を聴いても、誰がメイン・アーティストなのか全然分からない。そういう環境にほだされてしまったのが、最近のRundgrenの音楽だとしたら、ちょっと残念な気もする。
ただ、前作こそやり過ぎな印象だったが、本作は軌道修正したような気がする。あるいは、SunHeroの好みに寄せてくれたのかもしれない(笑)。なぜなら、前作よりはSunHeroにも判るアーティストが多くコラボ(参加)しているからだ。
“Espionage” Songlist + Featuring Musicians
1 Puzzle feat. Adrian Belew
2 Down with the Ship feat. Rivers Cuomo
3 Artist in Residence feat. Neil Finn
4 Godiva Girl feat. the Roots
5 Your Fandango feat. Sparks
6 Someday feat. Davey Lane
7 I'm Not Your Dog feat. Thomas Dolby
8 Espionage feat. Narcy
9 STFU feat. Rick Nielsen
10 Head in the Ocean feat. Alfie Templeman
11 I'm Leaving feat. the Lemon Twigs
12 Eco Warrior Goddess feat. Steve Vai
いかがでしょうか?英米のアーティストのみならず、オセアニアやアラブ圏出身のミュージシャンまで、SparksやRick Nielsenのような旧知の仲もいれば、10月に来日公演を行った弱冠19歳のAlfie Templemanまで、人脈の幅広さに改めて驚かされた。
興味深いのは、”Artist in Residence”。多くの曲をコラボ相手と共作している中、Split Enz・Crowded HouseのNeil Finnが提供した曲だ。まあ、最近は現YESのメンバー=Billy Sherwoodのカバー・アルバム・プロジェクトに幾度も参加しているから、自身のアルバムで他人の曲をやることに抵抗はないようだ。
前作に比べるとアクは薄まったが、特に印象に残る曲が無い。ゲストとのコラボを楽しむにはいいが、もう少しRundgrenらしさを前面に出して欲しかった。
ちなみに、音楽評論家のDisc Reviewを見つけました。SunHeroと違って、客観的でザックリと核心を突いた内容です。そちらもご参照下さい。
萩原健太氏のブログ Kenta's Nothing but Pop!:Space Force / Todd Rundgren (Cleopatra Records)
さて、百聞は一見にしかず。いつものようにAmazonとSpotifyのプレイリストを用意しました。他のサブスクを利用されている方も、もし本作が配信されているなら、一度だけで構いませんから聞いてみて下さい。
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