コロナ禍で空前の住宅ブームだそうだ。供給過多と言われていたタワマンも、投機目的で購入したものの、価格の下落で手放した物件が、格安で売りに出されていたりして、引く手数多らしい。まるで「風が吹けば、桶屋が儲かる」みたいな話だが、SunHeroの近所でも戸建ての建築ラッシュだ。
さて、建築と言えば、大工さん。英語に訳せば、carpenter。というわけで、ついにカーペンターズのプレイリスト登場です。サブスク音楽配信を利用し始めた頃からやりたかった企画ですが、公式ベスト盤以外にもホント沢山のプレイリストがあって、到底SunHeroの入り込む隙はないと諦めていました。
ところが、先日知人が面白いネット記事を教えてくれました。英国ガーディアン紙の人気?シリーズ”Ranked”で、カーペンターズのベスト20が取り上げられたのです。とてもユニークな選曲だったので、ソックリそのままプレイリストにしてみました。従って、20位1位というカウントダウン形式です。
リンク先の記事がいつまで有効なのか分からないので、つたない英語力で各曲のコメントを訳してみました。特定のアーティストを引き合いに出している部分は、敢えて割愛しました。だって、そのアーティストの音楽性について補足しないと、恐らく評者の言いたいことは伝わらないと思ったからです。
それから、日本語らしい表現にできなかった箇所は、直訳にしました。何かもっと上手い日本語表現がありましたら、コメントまでお寄せ下さい。即座に採用させていただく所存です。
The CARPENTERS' 20 Greatest Songs - Ranked(The Guardian's Choice)
- No.20-Road Ode (from “A Song For You” 1972)
カーペンターズの最高傑作アルバムは、リミックスや録り直し、ヒット曲を繋げて壮麗な黄金の塊にまとめるといった、当時類を見なかった手法を使った「シングルズ 1969-1973」であることに変わりはない。しかし、1972年の「ア・ソング・フォー・ユー」も、僅差の出来だ。なぜなら、ツアーに疲れたミュージシャンを華麗に描いたこの曲など、シングル向きの曲ばかりだからだ。 - No.19-Another Song (from “Close To You” 1970)
1970年代初頭の多くのアルバムは、自由形式のジャム・セッションで締めくくられているが、そうしたスタイルの解釈において、カーペンターズは最も独創性に富んでいた。「アナザー・ソング」は予想外にというか、むしろゾクゾクするほど、サイケなギターと時折り無調になるエレピの即興が、半狂乱のドラミングに下支えされた格好になっていると解析できる。 - No.18-If I Had You (from “Karen Carpenter” recorded 1980, “Lovelines” 1989)
カレン・カーペンターは、1983年2月の死の前日に、プロデューサーのフィル・ラモーンと電話で、お蔵入りしたソロ・アルバムについて話し合った。収録内容が死後のカーペンターズのアルバムで徐々に明らかになった時、彼等の決断に当惑した。この曲が証明しているように、滑らかで光沢感はあるが、尻込みしたような手直しを加えられても、カレンの登録商標である愁いを帯びた歌声は健在だからだ。 - No.17-Touch Me When We’re Dancing (from “Made In America” 1981)
アルバム「メイド・イン・アメリカ」は、リチャードの薬物依存症とカレンを最終的には死に至らしめた拒食症による活動休止からの慎重なカムバックだった。このシングル曲は、カーペンターズの優雅な音世界に、とても柔軟にディスコ・サウンドを手招いているようで素晴らしい。 - No.16-It’s Going to Take Some Time (from “A Song For You” 1972)
キャロル・キングは当時既にカーペンターズとは格の違う作曲家だが、原曲のように胸が張り裂けそうな傷心を事細かく描くというよりは、失恋の痛手を振り切って自分を鼓舞するようなカレンの珍しい歌唱は、心地良さすら感じさせる。 - No.15-Aurora / Eventide (from “Horizon” 1975)
1970年代半ばまでに、カーペンターズのアルバムは、型にはまった、中身の詰まったサウンドになり始めていた。それでも尚、ヒット曲の合間に時折何か卓越したものを生み出す。壊れてしまいそうな愛らしさのあるこの二曲は、1975年のアルバム「ホライゾン」の冒頭と末尾を飾る同じ曲のバージョン違いだが、その意味では完璧な事例だ。 - No.14-I Won’t Last a Day Without You (from “A Song For You” 1972)
ポール・ウィリアムスは、バーブラ・ストライザンドと「スター誕生~愛のテーマ」を共作し、近年もダフト・パンクの「ランダム・アクセス・メモリーズ」に参加するなど、長きに渡って音楽業界で活躍しているが、カーペンターズにとっても重要なソングライターだ。CMソングに始まった一連のカバー・ヒットが、それを証明している。超一流でほろ苦いこの曲も、その作品群に含まれる。 - No.13-All I Can Do (from “Offering / Ticket To Ride” 1969)
この曲には、カーペンターズがレコーディングした曲の中で、最も顕著にジャズの影響が窺える。Swingle Singersぽい何重にも重ねられたハーモニーや、カレンの驚異的なドラムに裏打ちされた5/4拍子のリチャードのエレピ・ソロなどだ。 - No.12-There’s a Kind of Hush (from “A Kind Of Hush” 1976)
カレン・カーペンターは、ミッキー・マウスのような無邪気に気取ったイメージを抱かれる事に抵抗があった。しかし、彼等のアップテンポな楽曲では、バラードで聞かれるような感動に重きを置くことは滅多に無い。それでも、たまに耳を傾けずにはいられない魅力的な曲がある。それがこの曲だ。 - No.11-This Masquerade (from “Now And Then” 1973)
カーペンターズは滅多に並な作品は作らない。1973年の「ナウ・アンド・ゼン」は、”Sing”のゾクッとする子供達の合唱やハンク・ウィリアムスの”Jambalaya”の彼等らしいカバーなど、枚挙に暇がなく申し分ない。レオン・ラッセルの破局しかけている恋愛を扱った歌の華美だが物憂げで暗いバージョンも、ご多分に漏れない。 - No.10-(They Long to Be) Close to You (from “Close To You” 1970)
リチャードのアレンジの手腕は、一聴して分かるくらい「ペット・サウンズ」期のブライアン・ウィルソンの影響を受けているが、見過ごされがちだ。そうでなくても、意図的に妹の歌唱の影に隠れてしまおうとしている。しかし、ふんわりと盛り上がるハーモニーと映画音楽のようなストリングスで彩られた叙事詩のアレンジは、実に素晴らしい。 - No. 9-Calling Occupants of Interplanetary Craft (The Recognized Anthem of World Contact Day) (from “Passage” 1977)
もはや忘れ去られたカナダのビートルズなりすましバンド=Klaatuの8分に及ぶエイリアン侵略の歌を、カーペンターズがカバーしたという事実は、今以上に1977年当時も注目されなかった。スター・ウォーズのブームや未知との遭遇が話題を集めた年だったにもかかわらずだ。華美なメロディーに全く以てバカげた内容の歌だが、カレンの歌声には不思議なくらい感動させられた。 - No. 8-Ticket to Ride (from “Offering / Ticket To Ride” 1969)
カーペンターズは、スロー・テンポにすることで、軽い憎しみを物憂い悲しみに変えた。今日では変に聞こえるかもしれないが、全く意図せずして「レット・イット・ビー」や「明日にかける橋」に匹敵する静寂を湛えた追悼のようだ。すなわち、ゾクゾクするような音楽的変革が、物欲しげな憂鬱へ変貌していく年代の終わりにあって、その先導役を担っていた。 - No. 7-For All We Know (from “Carpenters” 1971)
直前のヒット「愛のプレリュード」以上に、実りつつあるロマンスの途中段階を描いた歌だが、「二人の分かる範囲で、愛を育んで行きましょう」というサビの一節には、思わず肩がすくんでしまう。この曲はとにかく素晴らしく、特にイングリッシュ・ホーンがボーカルに絡むアレンジが見事だ。 - No. 6-We’ve Only Just Begun (from “Close To You” 1970)
元々はSmokey Roberdsが歌ったアメリカの某銀行のCMソングだったが、好機を得てカーペンターズがカバーした。にもかかわらず、その後もCMソングの方は、カーペンターズの喜びに満ちて柔らかなバージョンの前では見劣りする、如何にもCMジングルといったアレンジのままだ。 - No. 5-Hurting Each Other (from “A Song For You” 1972)
恐らく、カレンの類い希な歌声が、最も表情豊かに表現されている曲だ。表向きは楽天的な出だしの歌詞に悲しみを忍ばせ、サビの終わりでゆっくりと「決して何故なのか分らないまま」と歌う様は、確実に背筋が寒くなるような感動を起こさせる。 - No. 4-Yesterday Once More (from “Now And Then” 1973)
オールディーズを流すラジオへの非常に荘厳な賛歌は、1960年代を経て失われてしまったポップスへの無垢な熱心さを懐かしむドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」に対する、カーペンターズからの比較的言葉数の少ないアンサー・ソングだ。歌詞にある通り、1970年代は「思っていた以上に悲しく、沢山の物事が変わってしまった」時代だった。 - No. 3-Rainy Days and Mondays (from “Carpenters” 1971)
この曲は、何とも形容しがたい虚無感を見事に描写している。例えてみれば、1970年代当時の主婦に処方された精神安定剤のようなものだ。歌声は、諦めきった惨めさを、優しく慰めるような響きで、取るに足りない些細な事と思わせてくれる。 - No. 2-Superstar (from “Carpenters” 1971)
失恋したグルーピーというイメージは、カレンには似付かわしくないが、この曲での歌唱には思いのほか驚かされた。デラニー&ボニーの奔放なオリジナルをはじめ、先人達のあらゆるバージョンまで、完全に影が薄くなってしまったからだ。 - No. 1-Goodbye to Love (from “A Song For You” 1972)
カーペンターズの甘ったるいイメージにとって、ディストーションの掛かったエンディングのギター・ソロは、無謀な行為だと思われる。そもそも曲自体が大衆の期待するイメージに反するものだ。だが、カーペンターズの音楽的魅力の大部分は、超なめらかな編曲で悲しみを包み込むことから生まれたものだ。カレンのボーカルは、深い悲しみを自制した師範級の素晴らしさだ。批判覚悟で言うなら、この曲はすんげぇ~ヤバいぜ!
以上の選考理由により、ベスト20ですが、プレイリストは21曲あります。また、1995年に日本で大ヒットした「青春の輝き」も「トップ・オブ・ザ・ワーツド」も、ランクインしていません。日本だけのブームだったから、仕方ありませんよね。
そう言えば、あのブームからでも、もう四半世紀が過ぎました。Realtime Listenersも95ersも、久しぶりにプレイリストを聞きながら、”Yesterday Once More”と洒落込んでみてはいかがでしょうか?
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