
元々は、1965年デビューの英ロックバンド=The Whoが1969年に発表した4thアルバムだ。ロック・オペラ「Tommy」というコンセプト・アルバムだった。当時は、5th Dimensionが大ヒットさせた“Aquarius~Let The Sunshine In”で有名な「ヘアー」や、巨匠レナード・バーンスタインが手掛けた「ウェスト・サイド・ストーリー」など、米ソ冷戦時代の若者の閉塞感の解放をテーマにしたロック・ミュージカルが次々に登場していた。
余談だが、この流れは1970年代になっても、Andrew Lloyd Webberの出世作「ジーザス・クライスト・スーパースター」や、近年日本でも上演されるようになった「ゴッドスペル」、「ピピン」(共にStephen Schwartz作)に受け継がれていった。
どうやら英国産のロック・オペラでもブロードウェイで上演されると、以降はロック・ミュージカルと呼ばれるようになり、ロック・オペラと言えば「Tommy」やPink Floydの「The Wall」を指すようになった。
他のロック・ミュージカルと本質的に違うのは、本格的な舞台演劇として上演されたことがなく、コンサートという形で披露された点だ。舞台化が難しかったのは、ライブでは登場キャラクターを様々なゲスト・ミュージシャンが務めたからだと思われる。
ところが、映画化となると事情は違ったようだ。1975年にKen Russell監督により映画化された。今でも廉価版のDVD等で入手可能だ。The Whoのメンバー全員はもちろん、エリック・クラプトンやエルトン・ジョン、ティナ・ターナーなど多数のミュージシャンと共に、アン=マーグレット、オリヴァー・リード、ジャック・ニコルソンも出演した。
中学生の頃、全米No.1を連発していたエルトン・ジョンに魅了されて、新宿まで何度も観に行ったものだ。当時の歌舞伎町の映画館街は、広場を取り囲むように沢山の映画館があって、広場中央には池があった。今や池は埋め立てられ、都内屈指のキャパを誇っていたミラノ座は閉館し、その対面=コマ劇場跡地にTOHOシネマズ新宿があるのみだ。
ただし、東急系のミラノ座も、ホテルと映画館、劇場が一体となったエンタメ・ホテルとして2022年8月竣工予定だそうだ。変貌するのは、渋谷だけではないらしい。
また、大学生の頃には、ミュージカル好きの仲間と博品館劇場で「ゴッドスペル」との二本立て上映を観に行って、「Tommy」ではSunHero1人だけが興奮していた。仲間達は「ヘアー」や「ウェスト・サイド・ストーリー」は良く理解していたが、時代背景を共有する本作は抽象的でサッパリ分からないと、異口同音に感想を述べていた。
幼少期の体験から三重苦になったTommyが、トラウマから解放されて、新興宗教の教祖に祭り上げられ、両親は巨万の富を得るが、栄華は長続きしないというのが、あらすじだ。それが何を示唆するのか、実はSunHeroも未だに本質は掴めていない。
日本ではむしろ映画「ロッキー・ホラー・ショー」の方が有名だろう。残念ながら、上映権の関係で今後の日本での再上映は絶望的だ。元々がロンドンの小劇場で始まったミュージカルなので、日本人キャストで上演されることがある。
「Tommy」はあれほどエログロではないし、上映会を開催するほどカルト的なファンが沢山いるとも思えないので、45周年にかこつけたイベントに十分な集客が見込めるのだろうか?
丁度Mr.ロケットマンことエルトン・ジョンが、来年の引退に向けてワールド・ツアー中だ。折しも、オジー・オズボーンの新作にも客演しているそうだ。ちょっと前なら、映画「キングスマン」の続編にカメオ出演して大活躍したものの、往年のファンとしては醜態は見たくなかった。でも、本作なら若かりし頃の勇士が拝める。それは他の出演者も同じだ。それどころか、The Whoのメンバーなど、4人中2人が既に他界している。
そうは言っても、イマドキの若者(平成世代)が興味を持つのだろうか?きっと会場は40代以上の観客ばかりになるだろう。それでもSunHeroがお勧めするのは、半世紀前と事情は違うが、産業革命以来の謂わばICT革命の真っ只中で、社会が大変革を迎えて戸惑う若い世代にも、希望は見出せなくても、何か心に引っかかるものが残れば、それで良いのではないかと思うからだ。3月9日の夜に特に予定のない方は、ぜひお近くの会場へ!イープラス等で先行予約受付中です。
<< 2020年3月8日追記 >>
新型コロナウイルス感染症の拡散防止のため、本上映会は中止になりました。
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