「令和」の英訳について

日本政府としては、新しい元号「令和」を英語では「Beautiful Harmony」と訳して、諸外国にも同義の訳語を用いて説明する方針でいるようだ。出来るだけ当たり障りのない平易な表現を心掛けたのだと思うが、何だか小学生でも思い付きそうな英訳だ。もうちょっと「令」という漢字が持つ意味を掘り下げて、思慮深く最適な英単語は見つけられなかったのだろうか?

例えば「平成」。由来となった中国の文献から、「Achieving Peace」(成し遂げるべき平和)と英訳したそうだ。現実には、北朝鮮の脅威や世界各国で起きたテロや災害など、厳しい現実の中を掻い潜るような時代だった。産業革命に続くICT革命によって、社会システムや生活スタイルまでが大きな変革の渦に飲み込まれ、時流に乗り損ねた人達が厚生労働省の不就労者の算定枠からも漏れてしまう事態になった。

表層的には「平成」(平静)を保っていた時代だが、戦後最長と言われた平成後期の好景気(景気回復)も、その指標となる統計データが著しく正確性に欠いていることが判明し、「忖度」という名の改ざんの疑いまで浮上している。民主党が離散して再び野党が乱立する状況に戻ってしまっては、各野党の追求の仕方には一貫性が無く、与党側の詭弁のような答弁を打破するだけの弁論力はない。

さて、内閣(与党)が国会も通さずに勝手に決めた新元号だが、一応国会を立てて両院議長・副議長には話を通したものの、議会軽視は否めない。やはり「元号法」できちんと法制化すべきだろう。国会を通過させるためには、発案者や出典等の由来、元号に込めた意味合いなど、一連のプロセスが国民の前に明らかにされる。いわゆる「透明性の担保」だ。

軍事機密並みの厳重さで進められた選考方法は、見方によっては行政府(内閣)の独断専行だ。USAの大統領ほど強大な権限のない総理大臣を中心に秘密裏に進められたことは、本当に正当な手順だったのだろうか?明治・大正・昭和と続いた実質的には内閣主導の元号制定、今後もこのままで良いとは思えない。

元号問題以前にも、自衛隊の海外派遣問題が、十分審議されたとは思えない段階で、法案が可決されてしまった。また、現首相が関わったとされる2つの問題も、釈然としないままだ。「忖度」というテレパシーのようなトップダウンの暗黙の指令でもなければ、8億円の値引きとか、首相の個人的な友人の学校新設など、まるで日産のみならずルノーまでも喰いものにしたゴーンのような横暴さだ。

対外的にはトランプ頼みで、隣国の横暴に弱腰な反面、内政では詭弁をふるってヤリたい邦題だ。拉致問題は日本に限った事ではないが、同様の被害に遭っているはずの韓国は、事ある毎に慰安婦問題を持ち出し、協調して拉致問題に真剣に取り組もうとしない。特に文政権になってからは、南北朝鮮首脳会議を実現させ、それを足掛かりに米朝首脳会談まで進展したが、結局のところ日本は蚊帳の外に追いやられてしまった。

こうした諸問題から一時的にでも国民の目を逸らすという意味で、新元号制定の一連のプロセスはとても功を奏したと思う。実際、決定までの水面下の過程は一切明らかにしないと公言しておきながら、少しずつマスコミに情報が漏れ出している。小出しにすることで、マスコミ各社は他社を出し抜こうと必死だが、もっと重要な報道すべき事柄が他にもあるはずだ。拉致被害者家族だけでなく、沖縄県民もみんなシラケているだろう。

報道各社は全て同じ方法を向いた取材に明け暮れているようで、テレビチャンネルを変えても、さっきまで他局で取り上げていたニュースをまた見せられることが多い。しかも、各局ともコメンテーターに意見を求めるのだが、速報性の高いニュースの場合、全体像が明らかにならないうちにコメントせざるを得ない。例えば「丸刈りにするだけで暴行罪」といった突拍子もないコメントのせいで、事件の本質がかえって不明瞭になってしまう。そんな場面が、しばしば見受けられる。言葉に詰まって、ギャグで笑いを誘うなんて、愚の骨頂だ。

それにしても、「令和」には恐れ入った。確かに「令」には、命令・法令・令状など、上から目線の高圧的な意味合いがある。そのせいか、特に小学生くらいの子供には受けが悪いようだ。だが、発音は同じだが、「令嬢」なんて言葉もある。辞書でもこうした意味は5番目位に出てくるが、「良い・立派な」という意味だ。

海外では“order and harmony”とか“auspicious harmony”とか紹介した報道があるそうだ。

前者の『order』は、やはり真っ先に命令・注文・順序といった意味を連想しがちだが、「秩序」という意味もある。「秩序と調和」は今の日本に一番必要なことだが、前述の通りそう解釈してもらえるとは思い難い。そもそも「令」は「秩序」という意味を持たない。

後者の『auspicious』は「幸先の良い・縁起の良い」という意味もあるらしいが、拙宅の英和辞典には「適切な・(状況や物事に)ぴったり相応しい」といった説明しかない。いずれも『beautiful』よりはマシだが、いずれも『harmony』を形容するには説得力に欠ける。

そこで、SunHeroは提案したい。「令」=『moderate』という単語はいかがでしょうか?”moderate harmony”なら「節度のある調和」という意味になる。自国の都合ばかり主張する国際情勢の中で、例え綺麗事と揶揄されても、日本古来の奥ゆかしさが窺えて良いと思うが、いかがだろうか。

「令和」な世の中を実現するんだという願いが込められていると、諸外国の人々が果たして汲み取ってくれるものか不安はある。だからこそ、国際的な共感を得られるように尽力することこそ、「令和」の日本が果たすべき使命だと思う。


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