ヴァレリアン 千の惑星の救世主 [Valerian and the City of a Thousand Planets] (2017 France)

映画.comの紹介記事へ3月29日にグランド・オープンした東京ミッドタウン日比谷、もう行かれましたか?SunHeroは、TOHOシネマズ日比谷のプレオープン企画に選ばれた「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」の上映にかこつけて、訪れてみようと思っていました。結論から言えば、この企画に乗らなくて良かったです。

なぜなら、3月30日公開の本作を、3月27日からIMAX 3D版で先行上映するというイベントで、セブンチケット独占販売のチケットは、通常2,700円のところ2,100円でした。プレオープン後も同館で鑑賞可能なチケットでしたが、IMAX版の上映終了後の鑑賞でも、差額の払い戻しはない。それに、系列の他館での鑑賞にも使えない。制約の多さにウンザリしてしまったのです。

そんなリュック・ベッソン監督最新作は、フランスでは有名なバンド・デジネ(日本語の漫画、英語のコミックに相当する仏語)が原作で、監督は子供の頃から好きだったそうだ。実写とアニメを組み合わせた「アーサー」三部作で監督業を引退すると宣言していたが、「アデル ファラオと復活の秘薬」(2010)の監督を契機に撤回した。本作は「フィフス・エレメント」以来、20年振りのSF大作で、「Lucy」(2014)に続くSFアクション物だそうだ。

ところが、昨年7月にアメリカで公開された時点で、既に大コケしていた。アメリカ受けを意識したキャスティングやVFX・音楽だったが、アメコミ原作の映画のようなワクワクする興奮の連続とは行かず、仰々しいSFの体裁で描いたラブ・コメディーに終始してしまったと受け取られてしまったのが敗因のようだ。

残念ながら、日本でも大コケしたようで、多くの劇場で僅か3週間の上映に終った。きちんと確認した訳ではないが、TOHOシネマズ日比谷でさえ、IMAX 3D上映は公開第一週目だけだったようだ。真新しい映画館へ2,100円のチケットを持って行って、1,800円で(あるいは、ムビチケ等でもっと安く)見ている観客に混じって見る破目にならずに済んで、本当に良かった。

だが、そんなに駄作なのか?TV-CMやウェブ上のトレーラーを見た限りでは、そうは思えなかった。どうしても自分の目で見て確かめたかった。TOHOシネマズららぽーと横浜なら4月12日までIMAX 3D版を上映していたが、仕事帰りに見れる時間帯ではなかった。おまけに、最終日は「レディ・プレイヤー1」の先行上映会とかち合ってしまった。仕事帰りに見るとなると、イオンシネマ日の出の夜間上映しか選択肢はなかった。

結論から言ってしまうと、結構面白い映画だと思った。EuropaCorpの動画ロゴ(?)が映し出されると、早くも高揚してきた。ベッソンが設立した映画会社ですからね。続いてDavid Bowieの「Space Oddity」がフェイドインすると、1975年のアポロ18号とソユーズ19号のドッキングという実録映像が登場した。冒頭から意表を突かれたが、監督が意図したことは、すぐに理解できた。

人類の宇宙進出の未来予想図的な展開で、映画の舞台となるアルファ・ステーションの発展が描かれていく。様々な地球外知的生命体がステーションにドッキングして、友好の契りを交わす。巨大なコロニーを形成するようになると、地球への影響が懸念され、銀河系を彷徨う存在となってしまう。ここまではYouTubeに公開されているので、実物をご覧頂きたい。

アルファ・ステーションは、銀河を彷徨ううちに「千の惑星の都市」と呼ばれるようになる。United Human Federationなる組織が、「都市」の政治・治安を担っていた。主人公のヴァレリアンは、そこに所属する連邦捜査官として、銀河のパトロールや特殊任務を遂行していた。主役を射止めたデイン・デハーンは、「ディーン、君がいた瞬間」(2015)で主役のジェームズ・ディーンを演じていた。最近はプラダの広告にも起用されるようになった注目株だ。

相棒は若くて美しいローレリーヌだ。そもそも原作漫画は「ヴァレリアンとローレリーヌ」というタイトルだ。若い美男美女が宇宙狭しと活躍する物語らしい。ロマンスの要素が盛り込まれていても、ちっともおかしくない。どこかで宣伝の仕方を間違えたんじゃないか?

例えば、映画の原題から「都市」という言葉を取り去り、邦題に「救世主」などという大袈裟な言葉を用いたことで、日本では主人公は品行方正で無敵の英雄という先入観を持たれてしまったようだ。英米のSF作品には無い一種のユルサと、邦題から受ける先入観のギャップに落胆したというのが、日本の観客の大方の反応だろう。

さて、アルファ・ステーションのエピソードから一転、過度に文明を追い求めず、原始的ながらも平和に暮らすパール人の世界へ。何よりも映像が美しい。21世紀の人類の生き様とは対照的だ。冒頭の映像と共に、リュック・ベッソンが現代社会に訴えかけたかったアンチテーゼのようだ。そんなパール人の平和な生活は、ある日突然、惑星ごと消滅してしまう。

楽園を襲った悲劇は、夢か真か?いずれにせよ、ヴァレリアンの脳裏に正夢のように記憶される。目覚めれば、そこはVRで演出されたビーチ。起こしに来たローレリーヌは、VRをoffにしてもビキニ姿のまま。これから特殊任務に就くというのに、なぜかスケスケのガウンを羽織って、ヴァレリアンと共に宇宙船に乗り込む。英米のみならず、日本や中国だって、それなりの制服を着て出動するだろう。西暦2740年の宇宙は、それほど平和なのだろう。

従って、主人公達が登場するまでの演出とは、大きな落差がある。大抵の人は、そこでシラケちゃうのかもしれない。でも、次に登場する惑星キリアンは如何でしたか?実際には頑強な城壁で囲まれた砂漠に過ぎない土地が、実は巨大なVRショッピングモールになっていて、密かにヤバイ取引も行われているっていう設定も、NGでしたか?

SunHero的には、国防長官役でハービー・ハンコックが、顔と声だけの出演だけど、いきなり登場した時は、呆気に取られましたよ。それから、キャバレー・ダンサー役でリアーナが登場した時も同様かな。でも、彼女は「バトルシップ」(2012)で女優デビューしてたし、音楽活動でキレのあるダンスは披露済みだ。本作の役柄の方が相応しいと思った。

そもそもローレリーヌを救出するために、ヴァレリアンはなぜ歓楽街をうろつくのか?イーサン・ホーク演じるインチキ臭い興行師に言葉巧みに連れ込まれた御一人様用キャバレーで、華麗な変身ショーを長々と見せられるのは退屈でしたか?もしリアーナじゃなくてレディ・ガガだったら、日本ではずっと有名だから退屈しなかったかもしれませんね。

さて、リアーナが演じたバブルは、どんな姿にも変身できる能力を有していたが、それが興行師にいいように利用されて、謂わばエレファント・マンのような境遇だった。ヴァレリアンは、ローレリーヌ救出に協力することを条件に、キャバレーからの逃亡に手を貸す。

悪役といえば、「キング・アーサー」(2004)で主役を務めたクライヴ・オーウェンは、「都市」の治安維持における最高司令官役だ。ところが、徐々に化けの皮が剥がされていく。密かに絶滅したはずのパール人の生き残りを監禁していて、何かを自白させようと拷問していた。また、彼は常に護衛アンドロイドに守られていたが、そのK-トロンという護衛部隊には、とんでもない極秘任務が託されていた。まるで、スター・ウォーズ3でジェダイ戦士と行動を共にしていたクローン部隊のようだ。

そんな裏の顔など知る由もないヴァレリアン達は、現地協力者が犠牲になりながらも、「変換器」という小動物を密売人から奪取することに成功する。ローレリーヌはそれを常に携行し、最高司令官に渡そうとはしなかった。女の勘というヤツだろうか?用心深くて賢明な判断だったが、「都市」内の危険な罠には疎くて、他の種族を受け入れないブーラン・パソールに捕まってしまう。ヴァレリアンは特命を勝手に中断して、ローレリーヌ救出に奮闘する。

ラスボスは意外なほど身近に居た。スター・ウォーズのエピソード1~3でも、シスの暗黒卿がすぐそばに居たのに、ヨーダですら正体を見破れなかった。本作が真似した訳ではなく、スター・ウォーズの方が原作のバンド・デジネの影響を受けていたということだ。例えば、主人公達のパトロール宇宙船が、ミレニアム・ファルコンよりもダサイという酷評する人も居るようだが、背景を知れば納得することだろう。

なぜなら、「ヴァレリアンとローレリーヌ」の歴史は古く、第一作目は1967年に「ピロット」誌に掲載されたそうだ。その後単行本化されて、2010年の21巻目で完結したバンド・デジネの大定番なのだそうだ。「千の惑星の都市」というのは、1971年に刊行された単行本の題名だが、本作のベースになっているのは、1975年に刊行された「影の大使」だそうだ。

ローレリーヌ役はモデルとしても活躍している女優カーラ・デルヴィーニュだが、「スーサイド・スクワッド」では美貌の片鱗も見られない凄い格好だった。今回は、彼女の魅力が遺憾なく発揮できるような役柄で、さりげなく監督の手腕=女優の起用の仕方の上手さが光っていたと思う。一見女たらしの敏腕捜査官ヴァレリアンも、終始あの手この手で彼女を口説き落とそうとするが、彼女への愛情の本気度が、ブーラン・パソールからの救出によく現れていたと思う。

それを中弛みと感じてしまったら、仕方ありませんね。確かに緩い伏線でしたが、アメコミ原作の映画と違っていて当然とわきまえていれば、もう少し楽しめたんじゃないでしょうか?監督がリュック・ベッソンだという時点で、スイッチを切り替えておくべきでしたね。もしくはスイッチを切り替えようにも、OFFにするしか選択肢がなかったのかもしれない。勿体ないことをしましたね。SunHeroは大いに楽しんだので、IMAX 3Dで見れなかったことだけが、悔やまれて仕方ありません。


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