気が付けば、谷村有美も芸能生活30周年を迎えていた。1990年代前半のガールポップ・ブームの牽引者の一人だったが、結婚後は家庭を優先し、キャリアの序盤10年間で築いた実績だけを糧に、地道にライブ活動を続けてきた。子育てに余裕が出て来たのか、丁度20周年の節目だった2007年から、「おでかけツアー」なる地方巡業をスタートさせたが、2013年と2016年は開催されなかった。しかも、2年振りの開催となった今年は、関東二公演に留まった。
無理も無い。2010年代に入ると、流石に集客力が落ちてきて、コンサート・ホールからライブハウスへ、会場規模の縮小を余儀なくされた。結局、30周年の後半15年は、「Vol.15」に象徴されるように、クリコンだけは毎年欠かさず開催して、キャリアを維持してきたと言える。20周年や25周年とは違って、例年通りのこぢんまりとしたクリコンだったが、近年すっかり怠慢していた上、30周年を失念していたお詫びも兼ねて、久々にレポートすることにした。
谷村有美は、1987年11月21日にアルバムとシングルを同時発売してデビューした。無名の新人のデビューを後押しすべく画策されたと思われるのが、TBS系朝のテレビ番組「ドーナツ6」(月~金 6:00~6:30)の司会だった。番組名はDawn at 6(夜明けの6時)をもじったもので、1987年10月5日(月)から1989年3月31日(金)まで放送され、確か有美さんだけが最初から最後まで出演したと記憶する。
番組の司会は原則曜日当番制で、松下由樹とか田中律子が務める曜日もあったが、谷村有美だけは週3日も担当していた。おまけに、番組のテーマソングは、放送開始当時が「Not For Sale」、恐らく翌年4月から「ガラスの午前4時」、多分10月から「BOY FRIEND」と、谷村有美のシングル曲ばかりだった。「谷村有美売り出しのための番組だった」と揶揄されても仕方ない感じだった。
SunHeroは1988年10月から見始めたが、きっかけは今は無き日清パワーステーションで開催された「ファースト・ライブ」だった。ライブ中に番宣をしたので、翌朝、早起きして見た。予想通り、前夜のライブの模様がチラリと紹介された。SunHeroも寝不足だったが、番組のために午前4時起きだったという有美さんも、ほとんど寝ていなかったんじゃないだろうか?
あれから29年の時が過ぎても、SunHeroはクリコン会場に居た。4年連続の品川インターシティホール。ついにクリコン最多開催会場となった。著しい財政難に陥っていたので、横浜まで「おでかけ」したのだから、記念すべき15回目だけど、PASSしようと思っていた。思い直すキッカケは、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のIMAX上映だった。2年前と同様に、品川で両方鑑賞できると判ったからだ。
映画の方はTOHOシネマズのフライング上映(12/14夕刻の前夜祭イベント)のチケットを取り損ね、ライブの方は既に一般発売が開始されていた。半ば自棄クソになって、双方のチケットを取った。映画の方は2年前とは比較にならないほど見難い席だったが、ライブの方は2列後方だったが、前回の壁際とは大違いの中央寄りの席だった。
定刻から7-8分遅れで客席が暗くなり、対照的にステージが眩しいほど明るくなった。程なく有美さんの靴音が聞こえてきた。登場するや、上手⇒下手⇒センターと移動して、拍手のお代りをおねだり。高齢化社会を反映してか、観客の年齢層も高くなり、拍手にかつての勢いは無い。
無理矢理盛り上げておいて、相変わらず拍子抜けするようなピアノ演奏と弾き語り。しかも、クリコンの定番曲2連続だ。ここまで一応15回連続参加しているからこその贅沢な不満だ。谷村有美のライブは十何年振りという往年のファンなら、きっと感激も一入なはずだ。
その後、福田さんがさりげなく登場すると、矢継ぎ早にお馴染みの曲が披露された。5連続の最後に「今が好き」を持ってくるなんて無謀だろうと思いきや、見事に歌い切ったぞ!と言わんばかりに、満面の笑みを浮かべる有美さん。加藤さんを招き入れると、しばし福田さんと加藤さんにMCを任せて、さりげなく態勢を整えるあたり、伊達に歳取ってませんね。
30周年だというのに、これで演奏者全員ですって、やっぱり寂しい印象は拭えませんが、次の曲は久々じゃありませんか?両氏が初めて携わった有美さんの(未だに最新オリジナル・)アルバム「マイ・プレジャー」から一曲。さらに続けて、SunHeroが本格的に谷村有美にのめり込むキッカケとなった「PRISM」から。物凄く聞き覚えがあるのに、不覚にもどうしても曲名が思い出せない。深く反省しました。
「ドーナツ6」の思い出話に続いては、ファーストとセカンドのシングル曲2連発!もしかして番組テーマ曲メドレーか?と思ったら、流石に「BOY FRIEND」はやりませんでした。あれは、シングルもアルバム「Hear」のバージョンも、アレンジが酷かったけど、福田・加藤の両氏が再アレンジしてやったら、見事に生まれ変わっていたかも?
さて、再び定番の展開に戻ったものの、「格言」のようなタイトルの2曲は、シンガーソングライター谷村有美の信条を歌にしたものだから、記念ライブだけに外せませんね。しかも、20周年の時に松浦亜弥とデュエットしたというあの曲で、本編を締め括るとは!こうして振り返ってみると、リクエストメールを募っておきながら一通も紹介せず、実はさりげなく30周年をアピールするセットリストになっていたという訳です。
谷村有美と過ごすハートフルなクリスマス Vol.15
2017年12月16日(土) 品川インターシティホール
Evening Show Setlist
- Instrumental Part 1 from 9th "圧倒的に片想い" 1995
- サンタをむかえに行く夜 from Mini-Album "White Songs" 1991
MC:挨拶~福田裕彦呼び込み- 一緒に暮らそう from 7th "愛する人へ" 1993
- はじめの一歩 from 8th "幸福の場所" 1994
- がんばれブロークン・ハート from 3rd "Hear" 1989
- 最後のKISS from 7th "愛する人へ" 1993
- 今が好き from 5th "愛は元気です。" 1991
MC:福田裕彦との会話~加藤みちあき呼び込み~経堂駅~人間ドック~クリコン昔話~次曲の紹介- NO PAIN NO RAINBOWS from 11th "マイ・プレジャー" 2001
- 黄昏のシルエット from 4th "PRISM" 1990
- 愛は元気です。 from 5th "愛は元気です。" 1991
MC:「ドーナツ6」の思い出~次曲の紹介- Not For Sale from 1st "BELIEVE IN" 1987
- ガラスの午前4時 from 2nd "Face" 1988
- A・RA・WA from 11th "マイ・プレジャー" 2001
- 好きこそものの上手なれ from 7th "愛する人へ" 1993
- いちばん大好きだった from 6th "Docile" 1992
- 信じるものに救われる from 9th "圧倒的に片想い" 1995
MC:30周年の感謝- 笑顔 available only on "Crystal Time" 2007/"TANIMURA BEST" 2009
《 Encore 》
MC:クリコンTシャツの説明~他グッズの紹介~くしゃみを堪える- しあわせについて。 from 11th "マイ・プレジャー" 2001
- FEEL ME from 2nd "Face" 1988
MC:来場御礼- Tonight from 2nd "Face" 1988
MC:福田・加藤両氏お見送り- When You Wish Upon A Star(星に願いを) Theme from Disney animation "Pinocchio" 1940
MC:業務連絡?(来年のクリコン予告)
Musicians: - 谷村有美:All Vocals, Piano, Shaker, Tambourine
- 福田裕彦:Keyboards, Piano, Percussion
- 加藤みちあき:All Guitars
しかも、以前にも増して世知辛くなった世相を意識したと思われる選曲も見受けられます。例えば、「一緒に暮らそう」なんて、歌い出しが「戦争が始まったと 臨時ニュースを聞いて・・・・」だし、有美さんの歌が暴走気味だった「しあわせについて。」は、発表当時よりも歌詞が切実に迫ってくるし。
そうそう、「しあわせについて。」も、思わず新曲か?と勘違いしそうなほど忘却の彼方でした。おかげで、PCを買い替える度に移し替えてきたはずの「マイ・プレジャー」が、谷村有美フォルダーからそっくり消えてしまっていることに気付きました。
他のアーティストのフォルダーでも、アルバム・フォルダーの中身が空っぽというのが次々に見つかりました。USB3.0は早いなぁ~というのは、ぬか喜びに過ぎなかったのです。30周年を失念していた罰が当ったんでしょう。
そうは言っても、先日の「おでかけ」に続いて、毎回入場時に渡される記念品。またもやSunHero的には実用性ゼロ。今回はミニ・ポーチ。埃が付きやすく、すぐに薄汚れてしまいそうな綿生地で、オレンジ色でプリントされた「Yumi Tanimura」のレタリングも、十回も洗えば消えてしまいそうな安っぽさ。開演直前に期待感が半減してしまう。
要らぬグッズはやめて、その分チケット代を下げて欲しいものです。せっかく4度目の正直で、昼夜二公演に参加できる機会が巡ってきたのに、片方しか参加できなかった悔しさ。ましてや、来年は「おでかけ」を諦めても、「クリコン」に行けるかどうか、危うい気配です。チケット代、かなり切実な問題なんです。
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