Kasim Sulton - 3 (2014 USA) [Spotify & Amazon Music 対応]

音楽アルバムの形態も、LP (アナログ・レコード)、ミュージック・テープ (カセット・テープ)、CD (コンパクト・ディスク)、MD (ミニディスク)と、20世紀にも目覚ましい変化を遂げてきた。21世紀に入っても、新しい容器は続々と登場した。DVDやSDカード、USBメモリー、BD (Blu-ray Disc)が、仲間入りしてきた。他方、通信回線を介して、音楽を電子データのまま入手して楽しむ=特定の容れ物が無いという、対極の形態(?)も現れた。

SunHeroが初めてUSBやSDカードに入った音楽を買ったのは、8年前の倉木麻衣「All My Best」だった。同年暮れには、The Beatlesも「青リンゴ」のUSBを入手した。後者は、ハイレゾの先駆けとも言える高音質仕様だった。音楽ファイルのダウンロードの方は、実はもっと古くて、それこそがSunHeroにPCを買わせる動機となった。PCを買って、真っ先にダウンロードしたものは、Todd Rundgrenの有料配信サイト=TR-iで提供中だった楽曲だった。

さて、Todd Rundgrenがソロ活動と並行して展開していたバンド活動、それがUTOPIAだ。グループ名からTodd Rundgren'sが取れたのは、バンド名義の三作目からだが、その三作目からメンバーになったのが、Kasim Sultonだった。UTOPIA唯一のTop40ヒット“Set Me Free”では、何とKasimがリード・ボーカルを取っていた。

Utopia解散後は、様々なアーティストのサイドマンとして、ライブやレコーディングに関わってきた。Joan Jett & the BlackheartsやDaryl Hall & John Oatesのツアーで来日したこともあるし、Meat Loafに至ってはバンマス(Musical Director)を務めたこともある。

Utopiaではベーシスト・ボーカリスト・ソングライティングが定位置だったが、ドラムスと管楽器以外なら大抵の楽器をこなすマルチプレイヤーだ。Utopia在籍中の1981年に、EMI-Americaから初ソロ・アルバムをリリースした。それから33年後、“3”と名付けられたアルバムを発表していた。

Kasim Sultonは、個人名義のアルバムを5枚リリースしてきたが、“KASIM”(1981)、“Quid Pro Quo”(2002)に続くオリジナル三作目だ!ということを明確にしておきたかったそうだ。公式サイトのみ販売の自主制作CDだったので、SunHeroが気付いた時には売り切れだった。

だが、サイト内をよく見ると、コンサート会場で販売して好評だったことからという注釈付きで、USB版が販売されていた。ビデオ・クリップや歌詞、ライナー・ノート、Kasimが撮り溜めた写真の他、LEDライトが内蔵されているという説明だった。どうしても欲しくて、PayPalのアカウントを再取得したのは、先日掲載した通りだ。

4月初めに注文して、2週間も音沙汰ナシ。シビレを切らして問い合わせたら、注文から3週間後に発送通知が来た。それが昨日届いた。再生用のソフトウェアは付属していなかったので、"music"というフォルダーを開いて、全曲を選択し、Windows Media Playerのプレイリストに登録した。再生ボタンをクリック(タップ)すれば、CD同様に順番に再生してくれるからだ。

ところが、音楽ファイルの通し番号は、「02」から始まっていた。他の楽曲ファイルに倣えば、本来“01 Introduction.mp3”という名前であるはずのファイルが無い!CDオンリーの曲らしく、amazon.co.jpやiTunesで見つけたダウンロード版にも含まれていなかった。欠番曲は、Meatloafのヨーロッパ・ツアー中に立ち寄った教会で、偶然持ち歩いていたハード・ディスク・レコーダーに録音したもので、本人もいつどこで録ったか、定かでは無いようだ。

欠落していたのは、それだけでは無かった。ライナー・ノートも未収録だった。幸い、公式サイトからタダでダウンロードできるようになっていたので、早速補完(=保管?)した。USBには何のセキュリティーも規制も掛けられていなかったので、“lyrics”というフォルダーを“PDF”に変更して、そこに保管した。更に、バックアップという目的もあって、USB内のデータは、全てPCのHDDにコピーした。

それにしても、Kasim Sultonの交友関係は凄い。近年のツアーでお世話している御礼なのか、Todd Rundgrenが参加している他、懐かしのUtopiaのバンド・メイトが全員客演している。更に、The CarsのGreg Hawkes、Blue Oyster CultのBuck Darhma、ChicagoのJason Scheff、かつてBilly Joelのレコーディング&ツアー・メンバーで、その後Ringo Starr & His All-Starr Bandで音楽監督を務めたこともあるMark Rivera、主にドラマーとしてAl JarreauからCyndi Lauper、Peter Gabrielまで枚挙に暇がないほど沢山のアーティストのアルバムに参加しているJimmy Bralower、日本でも人気のあったハード・ロック・バンド=Danger DangerのAndy Timmons等々、一個人の自主制作にしては豪華すぎる客演陣だ。

だが、一番驚いたのは、無名のシンガー=Natalie Imbrugliaを一躍スターにしたPhil Thornalleyが、プロデューサーとして3曲に関わっていて、内2曲ではKasimと共作までしていることだ。しかも、ロンドン録音だ。Kasimとの共作ではない曲“Summer's Gone”は、ボーカルとベース抜きの録音が送られて来て、Kasimが自宅スタジオで完成させたそうだ。これがどこを切ってもELOという感じの曲だ。

それから、音質が良いのは、デジタルの恩恵に与っている部分もあると思うが、マスタリングをGreg Galbiが担当したことも大きいはずだ。スケジュールを空けてもらうのだって大変な、世界一多忙な一人だろうに、個人的なコネでもあったのだろうか?

(リリース時点で)38年にも及ぶミュージシャンとしてのキャリアが、色々な面で結実したアルバムだ。何よりも、Kasimのソングライティングの非凡さが、ここでも存分に楽しめる。一方で、意外な曲をカバーしている。ガーシュインは、日本で例えるなら滝廉太郎だろうか?

オリジナル曲で注目すべきは、USBに収録されているビデオを見る前に、公式サイトで先に見てしまった“Clocks All Stopped”だ。還暦を過ぎたKasimがプロになるきっかけを与えてくれたUtopiaへの感謝の想いを込めた楽曲だ。Phil Thornalleyのプロデュースだが、ギターとコーラスでTodd Rundgren、オルガンでRoger Powellが参加している。だが、マイナー調のいきなり印象的な転調が入るイントロや間奏のピアノはKasim自身で、間奏の印象的なギター・ソロは、一つ前の曲の共作者=Jon Greenだそうだ。

まもなく、Todd Rundgrenのニュー・アルバム「白騎士」(笑)が発売される(敢えて漢字表記にしたのは、カタカナだと「白夜」と紛らわしいからだ)。しばらくEDM作品が続いたが、今回は多彩なゲストを迎えたBlue-Eyed Soul路線だそうだ。Daryl HallやDonald Fagenまで参加しているとなると、一体ド~ナルド?

冗談はさておき、そのアルバムのラストを飾る曲に、feat. Joe Satriani with Prairie Prince & Kasim Sultonというクレジットがある。そして、本作のプロモ・ツアーは、4月29日からスタートしている。一体どういうメンツで回っているのか?来日公演は、秋以降にでもあるのか?その際、Kasimは同行するのか?来日した場合、Kasim単独のギグはあるのか?・・・・“3”を聞いていると、妄想がどんどん暴走して行く!


Kasim Sulton "Clocks All Stopped" from dannyo on Vimeo.




※ ご興味のある方は、上記YouTubeのリンク先を辿って、お楽しみ下さい。
・・・・と思いましたが、オマケでもう一曲!(リンクは2つあるけど(^▽^))


ナント当初はToddがボーカルだった!! なぜKasimに変わったのか?何となく分かる気がする。

<<2021年1月追記>>
SpotifyとAmazon Musicのプレイリストを埋め込みました。いずれかのアカウント(ログインIDとパスワード)をお持ちでしたら、該当プレイリストのロゴをクリックしてみて下さい。ブラウザーでプレイリストが表示されますので、ログインすると全曲フル・バージョンで聞くことが出来ます。
ただし、当ロッジは、各音楽配信サービスの利用に関するクレーム・トラブルには、一切責任を負えません。予めご承知おきの上、お楽しみ下さい。


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