これが映画となると、話は別だ。妄想をどう映像化するのか、俄然興味が湧く。何と言っても、誰が金魚を演じるかが重要だ。予告編を見たら、ナント二階堂ふみだった。まるで小学生のような無邪気さと、巧みに男心を弄ぶ小悪魔さを、見事に演じて見せてくれた。特に、自分を「あたい」と呼ぶ言い方が、昭和初期という時代背景にマッチしていた。
キャスティングも妙を得ていた。「あたい」に翻弄される初老の作家「おじさま」(当然、室生犀星自身の投影)を、これまた適役の大杉漣が演じている。「おじさま」に魔性の金魚を売った金魚売りが永瀬正敏で、自分が売った金魚だけに、全ての事情は承知の上で、日々飄々と金魚を売っている。悪人なのか善人なのか、その風体からは全く分らないところが、如何にもミステリアスだ。
さらに、若くして死んだ「おじさま」の昔の愛人を、真木よう子が演じている。金魚少女とイチャついているのに嫉妬して、典型的な幽霊の格好で時々現われるのだが、すっかり金魚少女のペースに乗せられてしまう。二人(?)で金魚踊りをするシーンは、ユーモラスだった。
だが、一番驚いたのは、幽霊が二足歩行だったことだ。おまけに、全力疾走するシーンまである。大真面目に滑稽な幽霊を演じていたのには、可笑しいやら、感心するやらで、複雑な気分だった。
とにかく、たわいもないストーリーだけに、可憐なのに奔放で、無邪気な妖艶さを振り撒いていた、二階堂ふみの出し惜しみエロスが、際立って印象に残る作品だ。「あたい」が居なくなった後の「おじさま」の不甲斐ないほどの喪失感に、大杉漣の演技の凄さを感じた。
同時に、SunHeroは妙な共感を抱いた。もし、夜店の金魚すくいで、二階堂ふみのような金魚に遭遇したら、きっと有り金叩いて、必死に「ふみ金魚」を救おう(←欲望を美化しちゃいけませんか?)とするに違いない。余りにも夢中になっていたら、人集りが出来ていたりして?(笑)
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