
かつてコンサートでこんなに緊張したことは無かった。クラシック系のコンサートですら、開演前はゆったりとした空気感が漂っているものだ。ところが、SunHeroにとって初鑑賞だったKing Crimsonの来日公演は、入口を入った時点から、何か異様な雰囲気を感じた。
その最たるモノが、客席内での撮影や録音を禁止する注意文だった。ロビーの目立つ所に張り出されていただけでなく、客席内を常に2-3人の係員が同じ主旨の書かれたプラカードを持って歩き回っていた。しかも、驚いたことに、その注意文は和文と英文で併記されていた。

特に日本語で書かれた注意事項は、禁止行為を細かく列記した上で、守れない者には退場して頂きますと言い切っていた。英国人にはユーモアと神経質が表裏一体となっている印象がある。特に「深紅の王様」として半世紀近くロック界に君臨してきたRobert Fripp御大の自身の作品に対する潔癖症を鑑みると、成り行き次第では本当に退場者が出るかもしれないと思えた。
開演数分前の場内アナウンスに至っては、ウグイス嬢による日本語の注意喚起に続いて、御大自らがユーモアを交えた柔らかい口調で、コンサートを素晴らしいものにするために協力して欲しいと要請した。指定の席に着いたら、自然と背筋を正して構えてしまった。
少しだけ緊張が解れたのは、途中に撮影タイムを設けるという説明があったからだ。Cue出し役は、ベーシストのTony Levinだった。彼がデジカメで客席を撮影している間だけ、観客も撮影OKというものだった。そうなると、演奏の合間はTonyから目が離せないことになる。
それはそれで、新たな緊張を生むことになった。SunHeroのスマホは、電源ボタンを押してから約2秒でONになるが、カメラが使えるようになるまで、さらに20秒程度掛かるからだ。撮影タイムは2回あった。最初は本編クライマックス直前、2回目はアンコールの演奏直後だった。
複雑な演奏を一糸乱れずこなした満足感からか、最後には御大もにこやかな表情でカメラを客席に向けていた。実際、ロックに限らず、こんなに濃密なコンサートは生まれて初めての体験だった。SunHeroの乏しい文才では、筆舌に尽くし難いほど、(Three of a?)Perfect Performanceだった。
従って、あと書ける事と言ったら、撮影結果くらいしか無い。終演後のグッズ購入列に並んで待つ間、撮影した画像をチェックした。10枚ほど撮れたが、ピンボケでも露出補正不良でもなかったのは、ほんの2枚しかなかった。
つまり、スマホのオートフォーカスも自動露出調整も、ほとんど機能しなかったという訳だ。せめて連写モードをONにしておけば、それなりに枚数が稼げたはずだから、上手く撮れたものも、それなりに多くあったんじゃないかという後悔だけが残った。

Current Personnel of KING CRIMSON
Behind(left to right)
Tony Levin: Bass Guitar,Stick Bass,Backing Vocal
Mel Collins: Saxophones & Flute
Robert Fripp: Guitar,Keyboards
Jakko Jakszyk: Guitar,Vocal
Front(left to right)
Gavin Harrison: Drums,Electronic Percussion
Bill Rieflin: Drums,Electronic Percussion,Keyboards
Pat Mastelotto: Drums,Electronic Percussion
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