
中国のみならず日本でもよく知られた伝奇小説「西遊記」の一部を、「少林サッカー」や「カンフーハッスル」で有名なチャウ・シンチーが6年振りで監督したアクション・エンターテインメントだ。原作をアッサリと逸脱しながらも、ろくに妖怪退治の出来ない妖怪ハンターが三蔵法師として天竺を目指すことになるまでを描いている。監督の作風が好きな人なら、十分楽しめるはずだ。
「西遊記」は全100巻にも及ぶ壮大な物語だが、ご存知のように大きく4つのパートに分けられる。
- 孫悟空の誕生から、悪行の数々の果てに、五行山に生き埋めになるまでを描いた前日弾。
- 一気に500年後の唐の時代に飛んで、釈迦に破門されながらも、下界で聖僧と敬われていた玄奘三蔵が、菩薩の命で天竺へ行くことになり、菩薩に教えられた孫悟空・玉龍・猪八戒・沙悟浄を、道中の護衛のため捜し出す旅に出る、謂わばもう一つの前日弾。
- 4人の弟子(家来)を従えて、天竺への旅に出た三蔵法師一行が、天界の用意した八十一難を克服していく物語のハイライト。
- 天竺で釈迦に謁見し、経典を授かり、苦難を乗り越えて、長安へ帰り着き、皇帝に経典を献上し、釈迦によって仏となって、ハッピーエンドを迎える。
本作は、パート2に当たる部分の映画化だ。そうなると、副題の「はじまりのはじまり」じゃ不適切だろう?それは、パート1に当たる孫悟空のエピソードじゃないのか?SunHeroなら「もうひとつのはじまり」にするけどな。担当スタッフの勉強不足を指摘せずには居られません。
とにかく、超有名な物語の中では比較的マイナーなエピソードにスポットを当て、チャウ・シンチー流に脚色したのは見事だ。玄奘は僧侶ではなく、訓練中の妖怪ハンターという設定だ。退治に行った妖怪に、逆に窮地に追い込まれたところに、スー・チー扮する女妖怪ハンター=段が現れ、助けられる。
段は、妖怪ハンターとしては半人前の玄奘に惚れて、玄奘が窮地になると、どこからともなく現れて助ける。挙げ句の果てに、自分達の仲間に引き入れようと、一芝居打って誘惑する。そこへ取り逃がした猪八戒が仕返しにやって来る。ドタバタ喜劇の真骨頂のような展開だ。
玄奘は、師匠に猪八戒を倒せるのは、五指山に幽閉されている孫悟空だが、性格に難があるので、十分用心せよと教えられ、様々な障害を乗り越えて五指山を目指す。孫悟空は久々の来訪者に喜ぶが、猪八戒退治の要請には応じない。やがて、孫悟空は言葉巧みに玄奘を騙し、五指山からの脱出に成功するが、そこで待ち受けていたのは猪八戒だった。
随分原作とは違う展開だ。玉龍が登場しない代わりに、女妖怪ハンターが登場する。それが最終的に玉龍になるのかと思ったら、そういう訳でも無かった。こうした意外性も、チャウ・シンチー流と言えば、一応説明が着く。
加えて、「2001年宇宙の旅」のスターチャイルドを想起させるシーンがあるかと思えば、日本の古いTVドラマ「Gメン’75」のパロディが天竺への旅立ちに使われていて、思わず座席から転げ落ちそうになるほど呆れたオチで終わる。日本での知名度を意識し過ぎだ。
SunHero的には、久しぶりでスー・チーのキレのいいアクションとお色気コメディが見れて、十分満足だった。ただ一つ、最後に段がやられちゃうのだけは許せなかった。
ところで、SunHeroはスー・チーの肉声が聞きたくて、迷うこと無く字幕版を見たが、後で吹替版の声優の皆さんの名前を見て、凄い事を思い付きました。このメンツで日本版を作った方が、もっと面白くなるんじゃ無いか?と。
だって、三蔵法師こと玄奘は斎藤工、スー・チーが演じた段は貫地谷しほり、孫悟空は山寺宏一、そして、何と言っても傑作キャスティングなのが、沙悟浄の箕輪はるかと猪八戒の近藤春菜だ。「少林サッカー」を元ネタに、「少林少女」が作られたという前例もあることだしね。その際には、副題は「もうひとつのはじまり」でお願いしますよ。
この記事へのコメント
ふじき78
「はじまりのはじまり」にはもう一つ記事があるので、そっちのアドレスを乗っけときます。複雑に絡むリンク。
スー・チー独自記事は読みました。エイリアン顔……まあ、スー・チーは独特な顔立ちですよね。女優じゃないけど似た顔は笑顔じゃない時の知念里奈くらいかな。
SunHero
「はじまりのはじまりのはじまり」ですかぁ?逆算すると、天竺へ行く道中記が「はじまり」っていうことになりますが、世間がそれで納得しますかねぇ?
SunHero的には、それもアリかな?と思いますけど・・・・スー・チーさえ出演してれば、何でもOKっす!
ふじき78
どうも、こっちからもTB付かないみたいなので、コメントにアドレス残しておきます。