オール・ユー・ニード・イズ・キル [Edge Of Tomorrow] (2014 USA)

日本のSFライトノベル(大雑把に言えば、表紙や挿絵が漫画的で、オタクや中高生向きの小説)が原作ということが、日本でのセールポイントだったので、興味を持った。近年、日本では文化的マイノリティが欧米で日本文化の主流みたいな人気を博すようになったとは言え、ハリウッド大作の仲間入りを果たすのは異例中の異例だろう。

残念ながら、桜坂洋の原作タイトルがそのまま使われたのは日本だけで、世界的には明日の縁(英語版公式サイトへリンク)という題名になってしまった。Killという言葉が不適切だというのは、SunHeroの語学力でも理解できるし、この方が文学的な良いタイトルだと思う。ところが、映像商品化の際に再度タイトルが変更になった。映画の宣伝コピーだったLIVE,DIE,REPEATに落着した。

最近のSFモノは大局ではタイムトラベル物だが、過去や未来を平気で変えてしまう傾向にある。パラレル・ワールドという理論に基づいて、むしろ積極的に未来を変えようとする。この映画は、その最たるものと言えよう。一体何回未来を変えたのか、すぐに分らなくなってしまった。主人公が死ぬ度に、前日に戻るのは、タイム・トラップ(時空の罠)の一種だ。特定の時間軸の間を際限なく行き来(ループ)する状態に陥ることだ。

何度も前日に戻ることで経験値が増して、少しずつ翌日の過ごし方が変わって行く。即ち、「明日」の生存時間が徐々に長くなって行く。だが、どうしても越えられない時間軸上の限界があって、普通ならそこで一生を終えるところ、過去へ戻ってしまう。その上、死ぬ前の記憶を全て覚ている。ウンザリした主人公は、ある時サジを投げてしまう⤵が、人知れずひっそり暮らしても、タイム・トラップから抜け出すことはできない。

ついに覚悟を決めた主人公は、「明日の縁」を超えるため、タイム・トラップにハマっていた女性兵士やエイリアンの正体を科学的に解明した軍の科学者の協力を得て、エイリアン撃退に乗り出す。さらに、自分が配属された部隊の仲間を説得して、エイリアンの中枢へゲリラ戦で挑む。

時間軸を操る能力は元々はエイリアンが有するもので、一旦は敗戦を期しても、戦況が有利な時点まで遡って侵略し直すから、圧倒的な強さを誇ることになる。こちらの作戦がバレバレなんだから、勝てる訳がない。だが、一度経験した敗戦には有効な能力だが、予知までは出来ないようだ。

Tom Cruiseが扮した主人公=William Cageは、軍人と言っても広報官なので、実戦経験は皆無。上司に疎まれて、ある日突然前線基地へ配属されてしまう。着任した翌日がいきなり出撃で、戦場に着くや否や殺されてしまう。だが、次の瞬間、気が付くと、前日に戻っていた。ここから今日と明日を何度も行き来する日々(?)が始まる。cageとは「鳥かご」とか「檻」という意味だ。タイム・トラップにハマってしまった主人公にピッタリの名前だ。

原作では、死ぬと同時に記憶だけが特定の過去の自分に転送・追加される。映画のように肉体まで時空を遡るわけではない。だが、その能力は本来エイリアンのものであるという点は共通している。そうした相違点は、ヒロインである女性兵士の登場意義も変えてしまった。

原作では、エイリアンが記憶情報を過去へ転送するアンテナとして利用していたので、トラップから抜け出すためには彼女を殺さなければならなかった。映画では、主人公を勝利へ導くパートナーとして描かれていて、過去へ戻る能力は輸血を受けると失われる。今度死ねば完全に絶命してしまうのを承知で、最終決戦に臨む。

何だか、言葉を変えて同じ事を繰り返し書いている気がしてきた。SunHeroまでタイム・トラップにハマってしまったのか?SunHeroの場合は、多分一眠りすれば抜け出せるはずだ!

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