こんなに待ち侘びたアルバムは、今までになかった。特にネット通販がスッカリ当たり前となった21世紀になって、新譜はネットで予約して、後は寝て待つのが日常となった。むしろ、新譜や在庫切れの既発盤と一緒に注文することで、在庫品の発送をわざと遅らせていたほどだ。だが、今回は発売日になっても届かないことに苛立った。最安店を探す余り、注文するショップを誤ったと後悔した。
これほどまでにせっかちになった理由は至極単純だ。4年振りのライブまでの予習期間が十分ではなかったから。しかも、予習の仕方も下手だった。既発シングル曲は大体分るんだから、純然たる新曲だけ集中的に聞けば良かったのに、家でも車中でもアルバム丸ごと再生だった。
ライブ後もヘビーローテーションだったが、聞き込むほどにアルバムとしての完成度の高さに感心させられた。足掛け5年分のシングル曲ばかりだと、アルバムとしてのまとまりに欠けて、もはや新作とは名ばかりのベスト盤程度にしか思っていなかったからだ。切ない曲を織り交ぜながらも、聞き終えると気持ちが前向き指向になる。つまり、とてもハッピーな気分になれる。
SunHeroが諸手を挙げて称賛した前作“IDENTITY”は、至極パーソナルな内容だったから、ファンですら当惑した人が多かったと思う。だから、オリコンで連続1位の記録が途切れる結果になった。でも、それで吹っ切れたBoAは、以前と変わらない無邪気さを全開にしながらも、率先してアルバム制作を楽しんでいるような印象だ。エンターテイナーとしての自信が漲っている。
見方を変えれば、散発されていたシングル曲が、アルバムにまとめられた時に魅力が倍増したのは、シングルでは一見様々なアプローチを見せて来たけれど、アルバムに於いて各曲のベクトルが一点にピタリと一致したからだ。5年前から意図的に取り組んできたとは思えないが、少なくともBoAがアーティストとしての方向性を見失わずにきた証だろう。
これだけ粒揃いの楽曲が用意できたんだから、合間にリリースされた韓国盤“Only One”から、2曲も転用する必要はなかったと思う。むしろ、あの韓国盤こそ、もう2-3曲多く収録されていて欲しかった。実質7曲では物足りない。だが、楽曲の作り込み具合は、どの曲もズバ抜けて素晴らしい。あのクオリティを本作にも取り入れたかったのかもしれない。それにしては、余りにも安直な手段じゃないか?(笑)
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