百瀬、こっちを向いて。 (2014日本)

「百瀬、こっちを向いて。」のポスター2011年に「ももいろクローバー」を突然脱退した早見あかりの初主演映画が、中田永一原作の同名小説を映画化した「百瀬、こっちを向いて。」だ。監督の耶雲哉治(やくもさいじ)にとっても、これが長編映画デビューに当るそうだ。

ご存知のように、ももクロは新たなメンバーを補充することなく、「ももいろクローバーZ」に改名し、残りの5人で活動を続けてきた。どちらかと言えば、「Z」に改名してからの躍進が目覚ましく、今春は国立霞ヶ丘陸上競技場(一般的には「国立競技場」と呼ばれている)2 Daysを成功させるほどのビッグネームに成長した。

一時期は、過去の映像を編集して、早見あかりが写っている場面がカットされるなど、険悪感が漂っていたが、彼女が女優として孤軍奮闘する姿に刺激されたのか、2012年のNHK紅白歌合戦初出場の際には、オリジナルの歌詞通り彼女の名前もノーカットで歌われた。これに触発された早見あかりは、大学進学を止めて、本作の撮影を始め、芸能活動に専念する決心をしたようだ。

入口のない出口 (通常盤)ももクロ側からのエールは、昨年リリースされた初期作品集「入口のない出口」にも現れていた。早見あかりが堂々ジャケット写真にも載っただけでなく、彼女のソロ曲まで収録されていた。脱退しても、事務所は同じスターダストですから、何の支障も無いですよね。

ももクロの紅白出場曲『行くぜっ! 怪盗少女』では、「制服脱ぎ捨て 華麗に変身」なんて歌詞があるが、早見あかりはこの映画で高校の制服に身を包んでいる。何しろ、彼女の役柄は、15歳・高校一年生だから。(撮影時は18歳・高卒)

さて、映画は向井理扮する30歳になった相原ノボルが、小説家として新人賞を取り、恩師の計らいで母校で講演をするため、高校卒業以来の帰省をする。昔とほとんど変わっていない駅前の光景に、懐かしさから周辺をブラついていると、小さな女の子を連れた女性から声を掛けられる。その女性はノボルの高校の先輩=神林徹子(中村優子)で、当時のほろ苦い想い出の主要キャストの一人だった。

喫茶店で近況や昔話をするうちに、ノボルは15年前の出来事を追想する。ノボルの幼馴染で命の恩人でもある2歳年上の宮崎瞬(工藤阿須加)は、スポーツマンで女生徒の注目の的。瞬には校内一の美人で同級生の彼女=神林徹子(石橋杏奈)が居たが、ノボルと同学年の百瀬陽(早見あかり)とも交際していた。

ある日、瞬に呼び出されたノボルは、瞬と百瀬が付き合っていることが噂にならないよう、百瀬と付き合っている振りをするよう頼まれる。小学生の頃、自転車で怪我をして動けなくなっていたところを瞬に助けられたノボルは、命の恩人の頼みだからと渋々引き受ける。校内では常にノボルと一緒にいる百瀬だが、ひとたび高校を出ると、瞬のバイト先へと走り去っていく。

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)ある日徹子の提案で、4人でダブル・デートをすることになる。ノボルと百瀬はぎこちないながらも恋人同士を偽装し、徹子はそんな二人を初々しく思っていた。それどころか、瞬と百瀬の関係には何の疑念も抱いていないように、無邪気に振る舞っていた。

やがて、ノボルの中に特別な感情が芽生え、ある夜瞬と対峙する。瞬はノボルに百瀬あての手紙を託す。ノボルは夜中だというのに、百瀬の家を訪ねる。物音に驚いた百瀬が出てくると、瞬からの手紙を渡した。

宮崎先輩は中学生の頃にテーラーの父親を亡くし、店舗兼自宅で一人暮らし。百瀬は5人兄弟の長女で、共働きの両親に代って、小さな弟妹たちの母親代わりだった。共に裕福ではない家庭環境ゆえ、宮崎先輩と百瀬が親しくなるのは自然の流れだったのだろう。

だが、宮崎先輩には父親の跡を継いでテーラーを再開する夢があった。家で家政婦の作ったおやつを食べるのが日課だった神林徹子は、ダブル・デートの際にも外でアイスクリームを食べたりするのが素直に嬉しいというお嬢様。ノボルが帰省した際、宮崎先輩は紳士服で手広く商売を展開していた。徹子と結婚したおかげだ。さらに、徹子の口から子供も二人いることを聞かされる。

10代のうちから、こんな打算的な男女交際をするものか?これが大人の物語だったら、宮崎先輩は別れ話がもつれて誤って百瀬を殺してしまう・・・・なんていう2時間ドラマになったかもしれない。高校生の男女交際と言えば、今やキス以上の関係は当たり前だが、こんな打算的な二股交際はアリなのか?そんな宮崎先輩に振り回されたノボルも百瀬も、お気の毒としか言いようがない。

全体的にセンチメンタルなトーンで描かれているし、そもそも10代の恋愛のもどかしさが主題だから、恋に恋する年頃だったら切なさで胸いっぱいになるんだろうな。三角関係が犯罪に発展するような縺れ方をしないのは、10代の未熟さゆえだろう。そこに引き摺り込まれたノボルは、当時の感傷を心に秘めたまま大人になったようだ。向井理にはハマリ役だ。

早見あかりも百瀬陽になり切って熱演していたが、若い頃の神林徹子を演じていた石橋安奈の演技がピカイチだった。15年後に明かされる「ほおずき」のオチは、石橋安奈のしたたかさを微塵も感じさせない女子高校生振りあってのものだから。

この原作には続編があるようで、映画化に当ってはその一部が脚本に盛り込まれたそうだ。どうやら、原作を読んでいてもいなくても、楽しめる映画のようだ。SunHeroも高校生の頃からメガネを掛けていたから、竹内太郎が演じていた高校生のノボルの姿に、叶うならもう一度高校生からやり直したいという気持ちに駆られてしまった。

そうそう、ノボルの高校時代の友人で、柔和でオトボケな感じなんだけど、さりげなくノボルにいいアドバイスをする田辺真治。お笑い芸人のひろみが演じていたんだけど、30代とは思えないくらい高校生役がハマっていましたね。SunHero的には、田辺君が目標とすべきキャラクターだな。

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百瀬、こっちを向いて。
Excerpt: 2013年 日本 109分 ロマンス/青春 劇場公開(2014/05/10) 監督: 耶雲哉治 原作: 中田永一『百瀬、こっちを向いて。』 主題歌: WEAVER『こっちを向いてよ』 出演: 早..
Weblog: 銀幕大帝α
Tracked: 2015-09-26 21:27
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