
何でついでに観たのが、この映画だったのか?黒木華が古風な和装美人とは全然違う役柄を演じていると分かったからだ。実際、この映画を見てオジサンが感じたことは、もう次のジェネレーションの俳優たちが育ってきているんだなという思いだった。だって、黒木華はまるで蒼井優の後進のようなスタンスだし、広瀬アリスは見た瞬間に長澤まさみを連想した。監督が「麦子さんと」の吉田恵輔であることは、実は後から知った。
主演はSexy Zoneの中島健人。中学お受験を経て入学した進学校で落ちこぼれて、農業高校へ進学した気弱な少年が、明確な将来の目標を持った同級生たちの中で、新たな劣等感を抱きつつも、自分なりの答えを見つけ出すまでの過程を好演していた。へっぴり腰で農業実習に参加していた八軒勇吾が、所謂文化祭で乗馬部の出し物として高校対抗のばんえい競馬を企画し、実現に向けて奮闘する姿には、少年の日の自分も見習うべきだったと感慨深かった。
複雑な家庭の事情を断片的に見せることで、家族の絆の深さを描いた「麦子さんと」よりは、呆気ないほど分かり易いストーリーに、一瞬これが同じ監督の作品?という疑問が沸いた。だが、少子化・スピード社会の真っ只中に生まれて右往左往している少年・少女向けなんだなと、すぐに合点が行った。
原作が漫画ということもあって、黒木華が演じた南九条あやめの高飛車なお姫様の衣装とか、やり過ぎ感も致し方ないかと思ったが、一番腑に落ちなかったのは吹石一恵が演じた教師だった。ボディラインが露わな黒尽くめの格好で指導する姿には、SunHeroだったら授業内容が耳にも目にも全く入って来ないんじゃないかと思った。
何が言いたいのかと言えば、10代の少年の最大の悩み事は、将来への不安と異性への興味だと思うのだが、映画の主題が前者である以上、後者はさりげなくコミカルに描かれている程度だ。それでも、映画がターゲットにしている年代には、十分伝わるはずだ。爽やかすぎる青春ストーリーだという主旨の感想を見掛けたが、それは大人の視点から見たもので、当事者の年代にしてみれば、あれ以上は掘り下げて欲しくないという気持ちだろう。
八軒君が入学早々の酪農実習で一匹の子豚に感情移入してしまったのを、周りにいた教師も同級生も家畜はペットじゃないと非難する。それが必ずしも本意ではないことが後々明らかになるシーンでは、見ているコッチも感傷的になってしまった。
ひとつは、同級生の駒場一郎(市川知宏)の実家が倒産して学校を去ることになった場面。一頭の老乳牛をいつまでも手放せない彼の母親(西田尚美)にとっては、亡き夫との想い出の牛だったんだろうなと思えた。
もうひとつは、家畜はペットじゃないと言った側の一人=御影アキ(広瀬アリス)にも、思い入れのある一頭の馬がいたということ。その馬が売られていく際、彼女の傍らには八軒君が居る。そんな二人の後姿を暖かく見守るアキの家族たち。アキの祖父母は八軒君を初対面からアキの婿さんにと思ったようだが、年の功の成せる直感だったのかもしれないと、勝手に納得してしまった。
最後にホロリとさせられたところに、やっぱり吉田監督の作品なんだなと思い知った。
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