「愛の渦」は、元々三浦大輔が主宰する演劇ユニット「ポツドール」の同名舞台劇で、「恋の渦」という映画が注目されたことから映画化が実現したようだ。「恋の渦」は、余り知られていない若い役者達を起用して、原作と脚本を三浦大輔が担当し、「モテキ」の大根仁がメガホンを取ったそうだ。合コンならぬ「部屋コン」を舞台にした青春恋愛模様を描いた映画というわけで、ある程度の交友関係のある連中の物語だが、「愛の渦」は乱交パーティーに集った見知らぬ他人同士の人間模様が描かれている。
人間関係が希薄な分、性を巡る男女の滑稽さと人間の本質が、「恋の渦」以上に明確に描かれているそうだ。映画化に際しては客が呼べるようなキャスティングが組まれ、御多分に漏れずSunHeroもキャスティングの妙に惹かれた次第だ。
設定が設定だけに、R18指定は止むを得ないが、本作は所謂ポルノではない。女性が見ても、否、女性にも見てほしい作品だ。実際、ヒューマントラストシネマ渋谷では女性限定の上映回も組まれたそうだが、テアトル新宿でも男女比はほぼ半々と言った感じで、こういう場合、むしろ男性の方が委縮しがちだ。
たまたま同じ目的で参加しただけの初対面の男女8人だから、主催者からどうぞ始めて下さいと言われて、すぐさま酒池肉林の宴に突入するはずもない。恐らく合コン以上の緊張感だ。当然やりたい相手とそうでない相手がいる訳で、初対面の緊張が解れるに連れて、各自の本音が露呈し、思惑の一致した者の間には連携が生まれる。
こんなことは何も乱交パーティーに限った事ではないが、そういう場だからこそ人間の本性が滑稽なほど如実に浮かび上がってくるという訳だ。童貞君が最終的に熟女を満足させるシーンでは、他の6人が拍手して称える。純愛ドラマなら恋愛が成就して微笑ましいはずだが、本作では何だか生々しくて可笑しい。本質を描くとはこういうことかと感心させられた。
そんな男女8人は、池松壮亮(ニート)・門脇麦(女子大生)・新井浩文(遊び人のフリーター)・滝藤賢一(妻子あるサラリーマン)・中村映里子(保育士)・三津谷葉子(OL)・駒木根隆介(土木作業員)・赤堀セリ(常連)が演じている。自分はどのタイプか、ついつい当てはめてみたくなる作品だ。SunHeroは年齢的にも滝藤さんが演じた役柄だな。
中でも、昨年「第二楽章」や「スクールガール・コンプレックス~放送部編」で高校生役を演じていた門脇麦の潔い脱ぎっぷりには脱帽だ。家族が寝静まった後やカラオケボックスで喘ぎ声の練習をしたという生真面目さに、改めて女優として惚れ直した。
さらに、パーティー会場の店長には最近TV・映画に引っ張りダコの田中哲司、バーテンダー風の店員に窪塚洋介、途中参加のカップルに柄本時生・信江勇と、適材適所だ。店長と常連女性の関係が明らかになるシーンとか、思わず笑ってしまった。基本的にはコメディーなんだけど、随所に盛り込まれているHシーンゆえか、観客の側にも傍観者としての妙な緊張感が漂っていて、素直に笑えない雰囲気だ。それも監督の狙いなんだとか。恐れ入りました。
本作のヒットを受けて、あちこちで「恋の渦」が再上映されているようだが、なかなかタイミングが合わなくて見れずにいる。でも、トレーラーを見た限りでは、無理して見る必要もないかと思った。そんな事はないよという方がいらしたら、コメントを頂戴したい。参考にさせて頂きます。
この記事へのコメント
SunHero
コメントありがとうございます。
恋の渦、池袋でのたった一日の上映を、映画館の慇懃無礼な応対に腹を立てて、見に行きませんでした。いつかどこかで見る機会ができるといいのですが・・・・
テアトル新宿は、ビルごと建て替えて、系列のヒューマントラスト風に作り変えて欲しいものです。新宿界隈と言えば、コマ劇跡にいよいよTOHOシネマズがオープンしますし、武蔵野館もマルチシアター化しましたし、シネマートや角川シネマのように、せめて2シアターでないと、生き残りは厳しいような....
小生は、今回の増税でも会員は平日千円を維持した立川シネマシティで見る頻度が増えるばかりです。例えもっと近場にイオンシネマが進出して来たとしても。
ふじき78
うん、恋の渦は面白いです。
テアトル新宿、今回の改装は場内いじってないと思いますよ(予告始まってからの1回しか入ってないから絶対的な確信はないんですが/まあ、座席はまだまだ・・・シネマスクエアとうきゅうさんなんかの方が無残だし)
SunHero
流石に柏は遠いので、4/18池袋・新文芸坐を狙っています。20:10からの上映なら間に合うかもしれないので。ただし、意地悪な上司が帰り際に残業を押し付けて来なければの話ですが。
谷
5日から18日まで
SunHero
DVDは映画を見て気に入ったら買っています。
どこかの映画館で観れませんかね?
谷
恋の渦はついにDVDが。
恋の渦はだれそれを視点にして映画を見ることができる作品で群像劇のなかではダントツです。
見たほうがいいですよ