同じ昭和という時代を扱っていても、戦後の「三丁目の夕日」よりも昔、戦時中の日本の街並みにさりげなくVFXを使うのはお手の物だろうが、戦闘シーンとなると果たしてどうかな?と高を括っていただけに、お見逸れ致しました。その上、同じ場面を視点を変えて撮影したことで、同じ時間を共有しながらも、縦糸と横糸が織り重なってひとつの反物になって行くように、各自の異なる想いが交差して行く様は、一介のVFX監督だったら、描き切れなかったんじゃないだろうか?
もちろんキャストの熱演がなければ、ヒューマン・ドラマとしての感動は、原作を超えることは無かっただろう。一応主演は宮部久蔵を演じた岡田准一ということになっているが、各シーンにおいては宮部久蔵を語る現代と戦時の二人一役を担った俳優たちこそが主役と思える位、いずれも見事な連携プレイを見せてくれた。すなわち、濱田岳と橋爪功、三浦貴大と山本學、そして、正に名コンビと思ったのが、新井浩文と田中泯だ。
特に、田中泯さん、「47RONIN」なんてハチャメチャな設定の映画でも、日本人が抱く時代劇の演技を貫いていたけど、映画(演技)に対する真摯な姿勢には感服いたしました。春馬君を一喝したシーンなんて、思わずSunHeroまでビクッとしちゃいました。
それから、もう一組、ご覧になった皆さんはご承知の通り、最重要なコンビがあるのだけれども、公式サイトのCAST相関図でも伏せられているので、ここでも詳しくは語れません。ただ、前述のコンビの回想シーンにチラチラ登場している染谷将太の演じていた役が、あれだけでおしまいだったら、それこそキャストの贅沢な無駄遣いだったことだろう。
ところで、戦時下(その前後も含めて)の昭和の女を演じさせたら、今や井上真央の右に出る若手女優はいないだろう。「あんみつ姫」や「ダーリンは外国人」で見せるコミカルな演技の方が、素に近いように思うが、「八日目の蝉」の数奇な運命を背負った役柄で、見事日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を取ったのは天晴でしたね。SunHero的には「みずほ」ちゃんなんだけど、最近マイレージクラブの特典が改悪されたので、嫌いになりそう。
それから、祖父の人物像を探し求めて奔走する孫たち、特に三浦春馬が最初は姉に付き合わされてイヤイヤだったのが、合コンでマジ切れするほど真剣になっていく様も、侮れませんね。岡田准一が一番美味しいところを持ってちゃってるけど、春馬君が本気で祖父のことを調べなければ「タダの臆病者」だった訳で、本当の主役は彼じゃないの?と思いましたよ。
唯一、この映画に難癖を付けるとしたら、現代の街並みの中で零戦を飛ばしちゃったシーンじゃないでしょうか?ああいうのは、如何にもスタジオ・ジブリがやりそうなアニメ的演出でしょ。あそこは春馬君に花を持たせてやるべきで、いくら主役だからと言って、岡田君を零戦で登場させるべきではなかったと思いますよ。VFXが得意だとしても、監督、過剰演出ですよ。
最後に、本作が遺作となってしまった夏八木勲さん、本当にいい役柄でしたね。クライマックスで主役だったのは、間違いなく貴方でした。謹んで、ご冥福をお祈り致します。
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k.m.joe