事の発端は7/17、安藤裕子が自身のオフィシャルサイトの「my room」に載せた「牙の行方」という書き込みだ。レコーディングの合間のスタッフとの語り合いを基に問題提起したものだ。「今変えなきゃいけないのは法整備だろう。」と説く。だが、取締りの対象となる連中の姿が見えない苛立ちから、「私はあんたに牙を剥く。さあ、あんたは誰なんだ?」と締め括っている。当然真っ先にファンが反応し、瞬く間に様々のニュースサイトで取り上げられるようになった。かつて音楽業界はCCCDや著作権法の改正で業界全体の利益を守ろうとした。CCCDは良心的な音楽ファン(正当な代金を払ってCDを買ったり借りたりする人達)までが巻き添えを食らったことから、不買運動が起きて、却って売上ダウンになってしまった。
著作権法の改正では国内の零細輸入CD商のほとんどが姿を消してしまった。だが、所詮は日本の国内法だ。海外に拠点のある業者は税関で押収される恐れがあると注意を促しながらも、日本国外で製造された邦楽CDの日本向け販売を続けた。法案は可決されたが、税関での対応などの細則が明確ではなくて、中国・台湾・東南アジアの系列レコード会社が発売したJ-POP等の正規CDは税関を素通りのようだ。だから、未だに逆輸入盤として国内盤の半値とか1/3とかで売っている店がある。
結局、いずれの手立ても右肩下がりの業界を救う決め手にはならなかったという訳だ。違法コピーと真っ向対決しなければ、安藤裕子が憂いているように、音楽業界は消滅してしまうだろう。思い切って配信行為は全て背信行為として禁止するしかないのかもしれない。
実際、正規の音楽配信サービスの中にはHMVのように止めてしまったところもある。iTunesの登場で一気に世界中に浸透した音楽のデジタル販売だが、謂わばマネーロンダリングの逆で、正規ダウンロード品がコピー制限を緩めた結果として不正配信の温床になっているような気がする。そもそも、購入先が店じまいした場合、PCを買い替えた時など、ライセンスのバックアップが行なえず、音楽ファイルは使い物にならなくなってしまう。
必然的にオーディオやPCのメーカーにもハードウェア的対応を要請する必要がある。CD-RやDVD-Rといったメディアに焼く(コピーする)ときは、甚だ不便なことになるが、WAV形式以外は不可とすべきだろう。同時に違法コピーを助長するソフトウェアは、著作権の絡むファイルはコピーできないように改変すべきだろう。
そうは言っても、音楽ファンのCD離れが相当進んでしまった現状でCD回帰を図るのは、無理・無茶・無謀=手遅れかもしれない。忘れてならないことは、正規のCDや正規の音楽ファイルを買うという行為は、イコールそのアーティストを応援することになるということだ。そんな業界の大原則が崩壊し始めているということだ。
かつて佐野元春がレコード会社のやり方に反発してソニー・ミュージック(エピック)を飛び出したが、今回の安藤裕子の提言は問題解決に向けて、さらに一歩踏み込んだものだ。反発では解決しない問題をアーティストもファンもレコード会社も皆で考えようというものだ。SunHeroも無い知恵絞って考えようと思う。ねえやん、あんたは音楽業界の坂本竜馬やね!
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