Jefferson Starshipというアメリカのロック・グループをご存知だろうか?昨年1月に彼等のRCA時代のオリジナル・アルバムが紙ジャケットで一斉に再発され、独り狂喜乱舞したものだが、その歴史は1966年にまで遡る。
当時のヒッピー文化(フラワー・ムーブメント)を背景に、サイケデリック・サウンドのブームを牽引したJefferson Airplane(以下、JA)が母体だ。ブームが去り、何人ものメンバーが去った後、1970年代に入ってからJefferson Starship(以下、JS)として再離陸を果たし、1975年には“Red Octopus”
その後紆余曲折を経て、1980年代後半にはStarshipとして3曲の全米No.1ヒットを放つも、もはやJAから連なる伝統とは別次元のバンドになっていた。その傍らで、JAのオリジナル・メンバー3人を中心に結成されたKBC Bandから発展して、一時的にJAが再結成。さらに1990年代に入ってStarshipが実質上活動を停止すると、KBC Bandを母体とした新生JSが正式に飛び立った。
新生JSは精力的に全米ツアーを行い、現在までに自主制作のライブ・アルバムを数枚リリースしている。一方、1998年にはJS名義では14年振りとなるスタジオ録音盤“Windows Of Heaven”
本作はアコースティックな演奏を基調とし、リーダー=Paul Kantnerの音楽的ルーツであるフォーク・ソングにスポットを当てた、グループ史上初のカバー曲集となっている。CDジャーナルによれば、Bob Dylan、Fairport Convention等の曲を取り上げているそうだ。あいにくSunHeroはそういう方面の音楽には疎くて、どの曲も頭の中でオリジナルと比較できないのがチョット悔しい。そうでなければ、もっと広い視野に立った楽しみ方ができたかもしれないからだ。

まあ、音だけ聞いても、断片的にルーツを感じ取ることは出来る。例えば、冒頭の“Wasn't That A Time”。アコースティック・ギターの力強いイントロは、JA時代の楽曲“Volunteers”にそっくりだ。これがあの過激な反戦歌のモチーフなのだろうか?
実は単なるカバー曲集ではなくて、“Imagine Redemption”はBob Marleyの“Redemption Song”とJohn Lennonの“Imagine”を融合したユニークな楽曲になっている。また、Marty Balin作の13曲目“Maybe For You”、Paul Kantner作の17曲目“On The Threshold Of Fire”と、オリジナル曲も収録されている。
だが、Marty Balinは既にグループを離脱しているようだ。“Maybe For You”は前作“Windows Of Heaven”の未収録曲(アウトテイク)なのだそうだ。もったいないので収録したというだけあって、他の曲とは毛色の違う仕上がりだが、むしろ懐かしく思えるほど従来のJSサウンドだ。
彼等は1990年代に2度来日公演を行なっている。いずれもフルバンド編成のエレクトリックなパフォーマンスだったが、アメリカではしばしばアコースティック・セッションを行なっている。当初はメンバーが全員揃わない場合の苦肉の策だったようだが、概ね好評を博したらしく、本作制作の遠因となった感じだ。すなわち、Paul Kantnerは純然たるフォーク調のソロ・アルバムという形態は取らず、バンド・サウンドに拘った。
そうすると、どうしてもインストゥルメンタル・パートがスカスカな音になりがちだが、その穴を多彩なコーラスワークで埋めている。本作には総勢18名のミュージシャンが関わっていて、曲によってはGrace Slickまでが借り出されている他、その後の歴代女性ボーカリストが全員名を連ねている。
そればかりか、JAと同時代に活躍したQuicksilver Messenger Serviceを経て、1970年代初めから1980年代前半までJSに在籍していたDavid Freibergが、20年余りの歳月を経て復帰し、ブランクを感じさせないボーカルを披露している。その他、ゲスト・ミュージシャンには、先頃紙ジャケ再発されたIt's A Beautiful DayのDavid LaFlammeなんて名前もある。
今やすっかり流動的な編成のJSは、どうやら昨年の来日メンバーがコア・メンバーらしい。すなわち、Paul Kantner(vo, g)、David Freiberg(vo, g)、Cathy Richardson(vo)、Chris Smith(Key, b)、Tony Morley(ds)という布陣だ。何とか都合を付けて行きたかったのだが、切羽詰って東京最終の12/2公演を前日に予約したものの、当日キャンセルを余儀なくされた。
Marty Balinが来ない以上、AORファンにはお馴染みのソロ・ヒット「ハート悲しく」(“Hearts”)や、JS最大のヒット曲となった“Miracles”は演らない、というか、演れないのは致し方ないところだ。逆に、この布陣だからこそ、ファースト・アルバム“Dragon Fly”
最後に、表向きは全18曲収録だが、実際にはもう1曲、シークレット・トラックがある。Grace Slickのボーカルがチラホラ聞こえるこの曲のタイトルは何と言うのだろうか?オフィシャルサイトを丹念に見ていくと“Easter Egg”らしいのだが、何分全て英語表記なので自信が無い。曲を聞いていると“Surprise, surprise”というフレーズばかりが耳に残る。これはタイトルじゃないのか?この曲に限らず、もう少し収録曲に関する情報が欲しいものだ。
★Best Track=“Wasn't That A Time”
アルバムのオープニングを飾るこの曲を聞いただけで、本作はJSよりJA名義の方が相応しいように思えた。JSほど熱心に聞き込んだ訳ではないが、JAのベスト盤に収録されるような曲は一通り聞いているつもりなので、“Volunteers”似の曲調に真っ先に親近感を覚えたという訳だ。
この記事へのコメント
SunHero[管理人]
JAファンだと一目で分るハンドルネームですね。
昨年の来日公演は行けなくて、本当に悔しいです。Cotton Clubのサイトに11/28のセットリストがありましたが、曲目だけ見ると何となく諦めきれそうな感じですが、演奏は素晴らしかったようですね。後でリンク先を訪れてみます。
シークレット・トラックの情報、ありがとうございました。Marty Balinの曲よりもさらに古い音源なんですね。本当の意味でこの新作のためにレコーディングされた曲は何曲あるんでしょうね?
私は“Red Octopus”からのファンなので、それ以前となると知らないことばかりです。どうぞよろしくお願いします。
プーニール
先日のJS来日公演ですが、シンプルな編成ながら
期待を上回るパフォーマンスで満足できました。
ライヴをご覧になれなかったのは残念でしたが、
2曲の映像や、ショー1回分全曲の音源が公開されていますので、
ぜひ楽しんでみてください。
(私のBBSのタイトル下にリンク先が貼ってありますので。)
新アルバムの最後に隠しトラックとして入っている曲ですが、
“Surprise”または“Surprise Surprise”と呼ばれています。
70年にポールのソロ・プロジェクトでの
セッションで録られたもので、レコード化はされていません。
ポールとグレースのアルバム“Sunfighter”などに
参加していたジャック・トレイラーの曲だと思われ、
リード・ヴォーカルも彼の声です。
またよろしかったら、お話しさせてください。