既に6月に柴田淳の11/25のコンサート・チケットを入手していた上、一足先に発表になったCarole Kingのツアー日程とも重なったため、已む無く(否、喜び勇んで)三軒茶屋まで観に行くことにした。ちなみに、SunHeroにとっては5年振りの対面だった。
年々酷くなる演奏中のリクエスト・コールに開き直ったのか、前回のツアーは大リクエスト大会となったそうだが、その甲斐あってか今回リクエストのおねだりは激減した。この日運よくリクエストに応えてくれたのは、終盤の“Rock Me on the Water”くらいのものだった。あるいは、あのわざと老いぼれてみせた新譜のジャケット写真にショックを受けて、老人をいたわろうという気持ちから自主規制したファンもいたかもしれない(笑)。
実際、実物は思ったほど老け込んでいなかった。ギターを抱えて椅子に座った姿は寺尾聰っぽく見えたし、立って歌う姿は「ギターを持った布施明」と言えなくもなかったが、還暦を迎えても70年代と変わらぬ飄々とした歌声に安堵した。どこかのブログで宇野重吉みたいだと評していたが、そこまで老いぼれているようには見えなかった。
ただ、事前に分っていながら、新作を予習しなかったばかりに、すんなりとコンサートの進行が受け入れられなかったのが悔しい。逆に、80年代後半から前作に至る、長年のファンの多くが熱心には耳を傾けなくなってしまった時期の作品でも、新作からの曲の合間にやると、非常に懐かしく思えたのが不思議だった。
今回事前に聞いてはいたが、黒人の女の子二人をコーラス隊として連れてきていた。6人編成のバックバンドは一気に白黒50/50という比率になった。初期3作のフォーキーなイメージが好きなファンには違和感があったかもしれない。だが、“Lives In The Balance”(1986)以降政治的なメッセージ性が濃くなると共に、レゲエやファンキーな曲調の楽曲もやるようになっていたから、ようやくなるべき編成になったと思った。。
確か“World In Motion”(1988)にはSly & Robbieが参加していて、もはや内省的な青年ではなくなって、アメリカ人として母国の行く末を憂う大人になったんだと、強く印象付けられた記憶がある。だが、当時の来日公演には黒人メンバーは居なかった。それでも、重いグルーブ感のある楽曲をキッチリ演奏したが、ベースやドラムに黒人を連れてきてもよかったんじゃないかという思いも微かにあった。
今回第二部には、昨年のSteely Danの来日にも同行したJeff Youngも含め、黒人メンバーの活躍する場面が用意されていた。黒人大統領誕生を支援していたJackson Browneらしい配慮だと思った。特に顕著だったのは、縦ノリのロック・ナンバーだと思っていた“Live in the Balance”だ。まさかあの曲で黒人コーラス隊を大々的にフィーチャーするとは思わなかった。2番以降はほとんど全部彼女達に歌わせて、主役はキーボード演奏に徹していた。何となく楽しげに演奏しているように見えたが、そのくらい彼女達がお気に入りのようだ。
そういえば、大昔、Japan Aidで来日した際、確か“Sun City”を演奏するためのスタンバイ中に、ちゃっかり白井貴子の隣に陣取り、何か一生懸命話掛けていたのを思い出した。噂には聞いていたJackson Browneの女好きな一面を垣間見て、隅に置けないなぁ~と思ったが、流石に今回の女性陣は娘?あるいは孫?くらいの年頃だろうにと、ちょっと呆れてしまった。
新譜を予習しなかった分、いつもとは違った観点からコンサートを見ることが出来た気がした。というか、新趣向を素直に楽しめた。だが、観客の中には戸惑ったり、違和感を覚えた人も少なくなかったようだ。終演後、会場を出るまでの間に、そういう感想を漏らしている人を何人も見かけた。
中には、Little StevenことSteve Van ZandtがE Street Band脱退中に発表した“I Am A Patriot”のカバーに対して、もっとJacksonのオリジナル曲を聞きたかったという意見も聞こえた。Japan Aid後最初の作品だった“World In Motion”にも収録されている立派なレパートリーだというのに。
そういう気持ちも分らなくはないが、未だに初期3作の頃の内省的な好青年のイメージをJacksonに求めているファンにはうんざりだ!会場の片隅で売られていた新作のジャケット写真を眺めていたら、そんな古いファンをフルイに掛けるという意図もあるんじゃないかと思えてきた。いずれにせよ、予習を怠った反省として、会場で新作を買って帰った。
<1st Session>
1. Boulevard
2. Barricades of Heaven
3. Everywhere I Go
4. Off of Wonderland *
5. Fountain of Sorrow
6. Time the Conqueror *
7. Live Nude Cabaret *
8. Culver Moon
9. Giving That Heaven Away *
10. Doctor My Eyes
11. About My Imagination
-intermission-
<2nd Session>
12. Somethimg Fine
13. These Days
14. For Taking The Trouble
15. Lives in the Balance
16. Going Down to Cuba *
17. Just Say Yeah *
18. The Drums of War *
19. Far from the Arms of Hunger *
20. Rock Me on the Water (by request)
21. The Pretender
22. Running on Empty
<Encore 1>
23. The Load Out
24. Stay
<Encore 2>
25. I Am a Patriot
*: songs from the latest album "Time the Conqueror"
※ ひょっとしたら、まだ加筆するかもしれません。
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