Chicago - XXX (February 2006)

結成40周年が間近となったベテラン・ロック・バンド=Chicagoが、全曲ニュー・マテリアルによるオリジナル・アルバムとしては1991年の“Twenty1”以来となる新作を発表した。メジャー・レーベルとの契約が切れて低迷してしまった90年代も地道に活動を続け、割と頻繁に来日公演も行ってくれたが、私としてはすっかり興味が失せてしまっていた。年初に本作のリリース情報が飛び込んできた時も、期待に心躍ることはなかった。


なのに、どういうわけか買ってしまった。Amazonが円安の影響で輸入盤の新譜価格が1,780円だった頃、たまたま寄った新星堂で「一撃価格」と称して1,680円で売っていたのが、買う気になるきっかけだった。丁度Donald Fagenが13年振りのソロ・アルバムをリリースし、音を聞く前から買おうと心に決めていたが、Amazonと新星堂の価格はChicagoと同条件だった。加えて、Fagenの新作と一緒に買うつもりだったThe Flaming Lipsの新作は、輸入盤が店頭には無かった。謂わば、Lipsの代りに購入したようなものだった。2枚買うと心に決めていたため、不用意に立ち寄ったCD店で1枚だけ買って帰るという選択肢は想定外だった。

冷静に考えれば馬鹿な買い物だったが、ほとんど期待していなかっただけに、意外とイケルじゃんと思った。全体のサウンド・プロダクションは80年代のワーナー時代を踏襲しているので、コロムビア時代、特に70年代前半のブラス・ロックで時代を席巻していた頃のサウンドに思い入れが強い方々には、相変わらず受け入れ難いものだろう。しかし、私はどちらかというとワーナー時代のサウンドの方が好きなので、すんなり聞けたという訳だ。

本作の幕開けを飾るのは、リードオフ・シングルの“Feel” だ。ドラム・ループとシンセサイザーによるイントロは、これだけで70年代前半のシカゴ・サウンドが好きな往年のファンにはそっぽを向かれてしまいそう(笑)だが、何とリード・ヴォーカルはRobert Lammだ。作詞作曲にメンバーが誰一人関与していない上、ブラス・セクションを抱えているバンドなのに全くブラスをフィーチャーしていないにも拘らず、この声を聞いただけで「やっぱりシカゴだ」と思ってしまった。

Chicagoの三大リード・ヴォーカリストで唯一人のオリジナル・メンバーであるRobert Lammは、結果的には脱退してしまったPeter Ceteraのラブ・ソング路線が当たるようになって久しく影が薄くなっていたから、それだけで嬉しかったのだ。この喜びは他のLammヴォーカル曲を聞いてFeeling Stronger(笑)となった。特に“90 Degrees And Freezing” ではブラス・セクションも大活躍していて、往年のシカゴ・ファンでもそこそこOKなのではないかと思った。

否、冒頭の曲こそノー・ブラ(笑)だったが、アルバムを聞き進むうちにブラスの出番が結構あることに気付いた。やっぱChicagoはこうでなくちゃと思っていたら、アルバムの最後にもう一度“Feel” が登場した。今度はブラス入りだった。一体どういうつもりでシングル・ミックスはブラス抜きにしたのだろうか?

全体的にはBill ChamplinJason Scheffがほぼ交互にリード・ヴォーカルを取る曲が続き、本作のサウンド・プロダクションが80年代を踏襲していると言える所以になっている。最新作“Me And My Gang”が全米第一位に輝いているRascal FlattsJay DeMarcusのプロデュースでナッシュビル録音された本作は、もっとカントリー・ミュージックの要素が強くなるのかと思わせていて、ちっともそんなことはなかった。金さえ出してくれれば、プロデューサーは誰でもヨカッタという訳か?少なくとも、自分たちの好きなようにやらせてくれたプロデューサーであることは確かなようだ。

念のために付け加えておくが、Rascal Flattsというカントリー・バンドは、2000年のデビュー当初からポップス寄りのカントリーをやっていて、アルバムを重ねる毎にアダルト・ポップスの要素が強くなっているそうだ。それが新作の全米第一位に結実したものと思われる。そのメンバー=Jay DeMarcusは単にカネを出しただけでなく、半分近い曲で曲作りにも関与している。実は今のChicagoにウッテツケのプロデューサーなのではないだろうか?溌剌としたサウンドを聞いていると、そう思えて仕方ない。

それにしても、・・・・
一体22~29を把握している者はいるのだろうか?(笑)

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